青い春に伸びる影

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どんな君も、見逃さないって決めたから



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涼華と遊弥は大きな荷物を抱え、温樹に駅まで送ってもらっていた。遊弥は終始申し訳なさそうにしているが、金城きょうだいは気にしていないようで、むしろそんな遊弥を見て何やら鼻息を荒くしていた。

「困ってるゆーちゃん、マジかわいい…。出発前からシャッター切りまくりなんだけど」
「涼華、帰ってきたらちゃんとカメラ見せてよ」

滑るように駅の入り口に車を付け、温樹は車から降り、二人をホームまで見送りに来た。

「気を付けてね。ナンパとかされても断るんだよ」
「大丈夫!子どもじゃないんだから」

心配そうに声をかけてくる温樹に、涼華は得意そうに胸を張って見せた。遊弥は一歩前に出て、温樹に言った。

「あ、あの…アタシが居るんで大丈夫です。喧嘩なら負けねェし」
「ダメダメっ、喧嘩なんて危ないこと禁止ー!」
「危なくねェよっ」

そんなやり取りをしていると、電車の時間が迫ってきた。二人は温樹に促され、電車に乗り込む。予約していた席を探しながら、涼華はふと遊弥の手を握った。遊弥は振り返る。

「絶対楽しもうね」

きょと、と遊弥の目が丸まった。そして、ふと柔らかく細められ、「ああ」と小さく頷いた。そんな様子に、涼華は興奮気味に「ゲキシャ!」と叫んだ。


今回、ふたりは五時間ほど電車に乗って、ちょっとした観光名所を巡ることにした。日帰りは大変だし、せっかくの休みなのだからと二泊三日の無理の無いプランにした。遊弥の地元にも近いらしく、涼華の頼みでそうなったのだ。

「ゆーちゃんの育った町が見たいなあ」

と目を輝かせ、インターネットを駆使して旅行プランを立てる涼華の姿を見て、遊弥は久し振りに地元に寄ることを決意したのだった。

(今更…だよな。みんな、アタシのことなんか忘れてる。野獣の存在なんか、忘れてる…)

遊弥は飛ぶように移り変わる景色を見ながら、半ば祈るように思った。思考の闇に沈んでいると、不意に唇に何かが押し当てられた。反射的にぱくりと口に入れると、チョコレートの甘さとビスケットのサクサクとした食感が舌に広がった。

「電車と言えばポッキーじゃない?わたし、お菓子いっぱい買ってきたの」

ふふっ、と笑ながらポッキーの袋を差し出す涼華。
遊弥はそこから一本抜き取る。
そして、気恥ずかしそうに頬を描くと、鞄から小さな包みを取り出した。

「……アタシは……作ってきた」
「え?」

ふわりと包みを開くと、中からはボールクッキーが覗いている。涼華はそれを覗き込んで、うわぁと感嘆の声を上げた。

「楽しみだったのは…お前だけじゃないんだ、よ…」

顔を真っ赤にしながらゴニョゴニョ話す遊弥に、涼華は叫んだ。






君はラブハンター!
わたし限定でお願いね!


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旅行編です。
しかし久し振り……






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