駄菓子屋松金─マツガネ─

□後日談
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僕らの町




「はい、開店かいてーん」

今日もとっつぁんの間抜けな声で、店のシャッターは開きました。
僕はいつものように旗を持って、お店の前に立たされます。

「んじゃ、呼び込み頼ま」

とっつぁんはそう言いながら、店の奥へと消えていきます。いつもの事ながら、二度寝でもするつもりなのでしょう。
僕が来てからと言うもの、いつもあんな感じなんです。

僕は溜息を吐いてから、仕方ないので旗を持って店先に立ちます。

目の前に見えるのは、色とりどりの花を並べた、【森永花屋】。朝から爽やかな気分にしてくれます。
特にミニひまわりなんて可愛いじゃないですか。

「あー、カノヤン!」

「おはよー!今日も旗持ちなのー?」

近所の子供たちがやってきました。誰が言い始めたのか、僕の名前は“カノヤン”で定着してしまっているようです。

「とっつぁんは奥に居るからね。起こしてきてあげて」

「なんだってぇ、だらしないなぁ」

ほら、言われてますよ。なぁんて僕は思いながら、店の中のことは任せて、再び外を見やります。

「あら、カノヤ君」

その視線の先に居るのは、爽やかなライトグリーンのトレーナーを着た、アリアさんでした。僕達が彼女のお父さんを救出してから、こうして頻繁にご来店頂いてるんです。

今日は、いつもと違って一人みたいですが、普段は家族の方とご一緒にいらっしゃるんですよ。

「あぁ、アリアさんじゃないの。いらっしゃい。一人?」

寝癖ボンバーのまま、子供に囲まれながら顔を出すとっつぁんに、アリアさんも微笑んでいます。

「ええ。今日は父が仕事なの。母もパートで居ないし。私は今日は休みだから、寄ってみたの」

「そうだったんですか。相変わらず何もありませんが、どうぞごゆっくり御覧ください」

「んだとコラ、駄菓子ナメんな」

僕の発言に青筋を立てるとっつぁん。ヒィ、ごめんなさいィィ!

「そうねぇ…」

アリアさんは大きな海老煎餅を一枚取ると、僕に小銭を差し出しました。

「これ、貰ってくわ」

「毎度あり。今度はドパーンと使ってよ」

「毎回毎回宣伝するのやめませんか…」

とっつぁんのいつもの言葉に、彼女は煎餅を噛りながら上品に笑い、「また来るわ」と言いながら背を向けました。

ふと視線を動かすと、向かいの森永さんと目が合ったので、笑顔で会釈します。

さて、今日も一日頑張ります。





いつまでもこのまま、平和で有れば良い



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【平和を望む者】後日談です。
アリアさんは何だかんだ言って、とっつぁんを気に入ってます。





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