駄菓子屋松金─マツガネ─

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『駄菓子屋松金』


すっかり街を行き交う人々の服装も厚着になって、吐く息は目に見えるほど白くなった。
店先に立つと、やはり冷えたなぁと染々思う。
窓ガラスに白く氷が張っていた。

「寒くなったなぁ…」

そう呟くカノヤの口からも白い息が出ており、見ているこっちも寒くなる。
後ろを振り向いて店の中を覗くと、常磐が何やらゴソゴソと荷物を持ってきた。

アルミホイルにくるまれた、細長い物体。見慣れないそれに、カノヤは首を傾げた。

「何ですか? それ…」

「焼き芋。水にしっかり浸して新聞とアルミホイルで包んで、炭火にGO」

常磐はだらしなく靴の踵を踏み付けながら、外に出て一つ身震いをした。その寒さを感じてか、マフラーを少し口元に上げた。

「炭火なんて用意してるんですか?」

「ん、麗雨ちゃんが用意するって。多分部下がするんじゃねーの」

常磐はどうでも良さそうにカノヤの問いに答え、芋をさり気なく持たせた。カノヤは自然な動作でそれを受け取り、常磐についていく。

歩いていくと、案内されたのは隊舎ではなく、街の小さな公園だった。そこには、ホームレスのオジサンと仲良く話す麗雨と、火の番をする浩也が居た。浩也は駄菓子屋二人組に気が付くと、軽く会釈した。

「遅かったでねーの、芋」

「…俺等が芋みたいだからやめてくんね? その呼び方…」

「あの、仕事しないんですか?」

二人に気付いた麗雨は無表情のまま言い、常磐はその呼び方が気に食わなかったのか、眉を寄せながら芋を手渡す。
カノヤの小さな呟きには誰も答えなかった。

「ほら、二人とも。火の前であったまりんさい。近頃随分しばれるでなぁ…」

「めっきり寒くなったからなぁ。麗雨ちゃんも風邪引かないようになぁ」

麗雨の言葉にホームレスのオジサンが笑顔で答える。むしろ自分の心配をすべきではないかと常磐は思う。

「さっさと焼くべ。神野さんにバレたら碌な事ねェから」

「自業自得だろ、それ」

芋を急かす麗雨に、常磐はツッコミを入れた。

寒空の下、小さな焼き芋パーティーが始まった。




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たぶんこの後麗雨と浩也は怒られますね。
駄菓子屋松金でした。






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