□目を閉じて
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(カカシサイド)


報告書を提出した帰り道、前方に見知った姿を見つけカカシは歩みを少し速めた。

その姿が街灯の下に入り、その者をはっきりと照らし出す。

ナルトだ。

任務が終わったのはまだ日のあるうちだというのに、こんな時間に外をうろつくのは珍しい。

一楽の帰りかとも思ったが、道が違う。

誰か友人と一緒だったのだろうか。



カカシは追いつくと、背後から驚かせないように声をかけた。

夜道で背後から声をかければ驚くのは道理で、ただでさえカカシの気配は普段から薄い。

振り向いたナルトの顔は、街灯の下でも分かるくらいに、いつに無く赤い。 

「どうしたの?」

赤い顔には汗が浮かび、両手で腹を押さえていて体調が悪そうに見える。

いよいよ悪くなった牛乳で腹でも壊したか……などと、失礼な事が脳裏に一瞬浮かぶ。

けれどそれを口にして茶化すには、ナルトの様子が異常すぎた。

「カカシ先生……今、帰りかよ……」

「うん、報告書纏めるのに時間がかかってね…それより……」

カカシの表情を読んだのか、ナルトは無理やりに笑みを浮かべて首を振った。

「なんでもないってばよ…ちょっと…」

「ちょっと? お腹でもいたいの?」

「違う、違う……」

無意識に後ずさるナルトを、二の腕を掴んで引き寄せた。

その瞬間、こっちが驚く程身を震わせて―――何かに耐えるように目を閉じる。

尋常ではないナルトの様子に、すぐさま額に掌をあててみた。

熱っぽくはあるが病気を心配する程ではない。

「どうしたの……こんなに汗かいて……」

黙り込んで俯く子供に業を煮やし、カカシは腕を掴んだまま自分の部屋へと拉致連行することにした。



   *****



連れて行かれる間、ナルトはなんでもない、大丈夫だと一生懸命訴えてきたが、聞く耳は持たない。

「大丈夫に見えないからね、何でもないならオレの部屋に寄るくらいいいでしょ?」

カカシの住むアパートの前に来てしまっては、ナルトも観念したのか大人しくなった。



部屋に上がりベッドに腰を下ろすと、ナルトは何故かベッドの下に正座した。

「隣りに座ればいいのに…」

「オレ、任務の後…着替えてねーし……」

汚しちゃ悪いし…と、弱々しいニシシ笑いをする。

―――やっぱりヘンだ。



任務の後、何処に何しに行ったか細かに聞き出せば、シカマルの家に行って薬を作る作業場を見せて貰ったと云う。

最近はシカマルも薬剤調合を教えてもらっていると、面倒くさそうに云っていたらしい……

奈良の家では鹿の角を使った薬剤を主に作っているが、材料は様々だから薬の効果も様々だ。

簡単な処では腹痛を治すもの、眠気を催すもの、滋養強壮、精力増強、などなど……



「で? そこで何か貰って呑んだって?」

「おう…元気になれるヤツだって……疲れも吹っ飛ぶっての……」

「元々元気なおまえが呑んでどうするの」

これ以上元気になられては、任務中の制御が大変だ。

「で? お腹がヘンになったの?」

「ヘンっつーか……なんか……」

「なんか?」

「………熱いっていうか……」

ナルトは再び俯いて、モジモジと膝を動かしている。

ベッドに座ったカカシからは表情は読み取れないが、金髪の隙間から見える耳は真っ赤で……多分顔も同じくらい赤いに違いない。

そこでふと何かに思い当たったのか、カカシは何も云わずにナルトの身体を軽々と抱え上げ、ベッドの上に転がした。

いきなり事に、ナルトは声も上げることも出来ずにベッドの上で身を固めた。

カカシはナルトの背後から腕を回し、ヘソの封印式の上に手を這わせ徐々に下へと滑らせていく。

「ひっ…駄……せんせぃ…」

制止の言葉を発する事が出来たのは、カカシの手が知られたくない変化を遂げた箇所に辿りついた時で、ナルトは悔しそうに目を瞑った。

「何も恥ずかしがらなくてもいいじゃない…男の子なら当たり前の生理現象だし…」

耳元で聞こえるカカシの声と息遣いだけでも、ナルトの身体は震え、熱くなってきた。

「一回自分でヌいてみる? ちょっとは落ち着くよ」

カカシとしては、このままこの手で変えてやりたい気もしたが、こんな状態のナルトに施す事に少しばかりの罪悪感が湧く。

どうせなら愛のある行為として、最初から最後まで教えてやりたい。

フルフルと頭を振るナルトは、カカシから顔を隠すように身体を丸めてしまった。

あそこに添えられた手はそのままだから、小さい喘ぎにも聞こえる声が食いしばった歯の隙間から洩れ出た。

「どうする?…ナルト…」

ワザと耳元で喋ってみる。

「…わかんねぇ…し…」

「何が?」

「一人でどうすれば…治る…か……」

嘘…と、思わず云いそうになった。

自慰行為を知らないって? この年で?

純粋培養されたお城のお姫様じゃあるまいし―――



カカシは、知らず知らず笑みを浮かべた。

それは、いつも見せる『先生』の顔ではない。

「教えてあげようか……楽になれるよ……」






「……目を閉じて……」







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