□目を閉じて
1ページ/3ページ
(カカシサイド)
報告書を提出した帰り道、前方に見知った姿を見つけカカシは歩みを少し速めた。
その姿が街灯の下に入り、その者をはっきりと照らし出す。
ナルトだ。
任務が終わったのはまだ日のあるうちだというのに、こんな時間に外をうろつくのは珍しい。
一楽の帰りかとも思ったが、道が違う。
誰か友人と一緒だったのだろうか。
カカシは追いつくと、背後から驚かせないように声をかけた。
夜道で背後から声をかければ驚くのは道理で、ただでさえカカシの気配は普段から薄い。
振り向いたナルトの顔は、街灯の下でも分かるくらいに、いつに無く赤い。
「どうしたの?」
赤い顔には汗が浮かび、両手で腹を押さえていて体調が悪そうに見える。
いよいよ悪くなった牛乳で腹でも壊したか……などと、失礼な事が脳裏に一瞬浮かぶ。
けれどそれを口にして茶化すには、ナルトの様子が異常すぎた。
「カカシ先生……今、帰りかよ……」
「うん、報告書纏めるのに時間がかかってね…それより……」
カカシの表情を読んだのか、ナルトは無理やりに笑みを浮かべて首を振った。
「なんでもないってばよ…ちょっと…」
「ちょっと? お腹でもいたいの?」
「違う、違う……」
無意識に後ずさるナルトを、二の腕を掴んで引き寄せた。
その瞬間、こっちが驚く程身を震わせて―――何かに耐えるように目を閉じる。
尋常ではないナルトの様子に、すぐさま額に掌をあててみた。
熱っぽくはあるが病気を心配する程ではない。
「どうしたの……こんなに汗かいて……」
黙り込んで俯く子供に業を煮やし、カカシは腕を掴んだまま自分の部屋へと拉致連行することにした。
*****
連れて行かれる間、ナルトはなんでもない、大丈夫だと一生懸命訴えてきたが、聞く耳は持たない。
「大丈夫に見えないからね、何でもないならオレの部屋に寄るくらいいいでしょ?」
カカシの住むアパートの前に来てしまっては、ナルトも観念したのか大人しくなった。
部屋に上がりベッドに腰を下ろすと、ナルトは何故かベッドの下に正座した。
「隣りに座ればいいのに…」
「オレ、任務の後…着替えてねーし……」
汚しちゃ悪いし…と、弱々しいニシシ笑いをする。
―――やっぱりヘンだ。
任務の後、何処に何しに行ったか細かに聞き出せば、シカマルの家に行って薬を作る作業場を見せて貰ったと云う。
最近はシカマルも薬剤調合を教えてもらっていると、面倒くさそうに云っていたらしい……
奈良の家では鹿の角を使った薬剤を主に作っているが、材料は様々だから薬の効果も様々だ。
簡単な処では腹痛を治すもの、眠気を催すもの、滋養強壮、精力増強、などなど……
「で? そこで何か貰って呑んだって?」
「おう…元気になれるヤツだって……疲れも吹っ飛ぶっての……」
「元々元気なおまえが呑んでどうするの」
これ以上元気になられては、任務中の制御が大変だ。
「で? お腹がヘンになったの?」
「ヘンっつーか……なんか……」
「なんか?」
「………熱いっていうか……」
ナルトは再び俯いて、モジモジと膝を動かしている。
ベッドに座ったカカシからは表情は読み取れないが、金髪の隙間から見える耳は真っ赤で……多分顔も同じくらい赤いに違いない。
そこでふと何かに思い当たったのか、カカシは何も云わずにナルトの身体を軽々と抱え上げ、ベッドの上に転がした。
いきなり事に、ナルトは声も上げることも出来ずにベッドの上で身を固めた。
カカシはナルトの背後から腕を回し、ヘソの封印式の上に手を這わせ徐々に下へと滑らせていく。
「ひっ…駄……せんせぃ…」
制止の言葉を発する事が出来たのは、カカシの手が知られたくない変化を遂げた箇所に辿りついた時で、ナルトは悔しそうに目を瞑った。
「何も恥ずかしがらなくてもいいじゃない…男の子なら当たり前の生理現象だし…」
耳元で聞こえるカカシの声と息遣いだけでも、ナルトの身体は震え、熱くなってきた。
「一回自分でヌいてみる? ちょっとは落ち着くよ」
カカシとしては、このままこの手で変えてやりたい気もしたが、こんな状態のナルトに施す事に少しばかりの罪悪感が湧く。
どうせなら愛のある行為として、最初から最後まで教えてやりたい。
フルフルと頭を振るナルトは、カカシから顔を隠すように身体を丸めてしまった。
あそこに添えられた手はそのままだから、小さい喘ぎにも聞こえる声が食いしばった歯の隙間から洩れ出た。
「どうする?…ナルト…」
ワザと耳元で喋ってみる。
「…わかんねぇ…し…」
「何が?」
「一人でどうすれば…治る…か……」
嘘…と、思わず云いそうになった。
自慰行為を知らないって? この年で?
純粋培養されたお城のお姫様じゃあるまいし―――
カカシは、知らず知らず笑みを浮かべた。
それは、いつも見せる『先生』の顔ではない。
「教えてあげようか……楽になれるよ……」
「……目を閉じて……」
.