□ネコ
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(ナルトサイド)
任務の途中、ナルトはキレイな石の繋がった輪を見つけた。
透明な石と緑色の石が交互に並んだ……里の女の人が手首にしてるのを見たコトがある。
アクセサリーってヤツか?
オレはしないから分からないけど、身体を飾るだけでなく、お守りに持ってる男もいた気がする。
ナルトは好奇心もあり、腕にしてみることにした。
ポンッ♪
左手首にしたとたん、破裂音と共に煙に包まれ視界が真っ白に変わった。
いきなりの事に驚いたナルトは蹲り、目を擦りながら咳き込んだ。
(なんだ?いったい…この煙は……)
そう云った心算が、なにやら声が変だ。
煙で声が出なくなった……訳ではないらしい。
(どうしたんだろう…視線が…低い気がするってばよ)
蹲っていたせいかと、立ち上がろうと足に力を入れてみるが視線は変わらない。
いよいよどうしたんだろうと、周囲を見回してみるが、見えるモノが尽く白黒画面だ。
(なんでだ〜っ)
「にゃーー」
自分の声と重なる声……いや、これは自分の声?
にゃーって??
キョロキョロ見回した先に動くモノを発見!……って、おい……ネコの手?
手を開いたり…してみるが、実際指らしい手の先が動くだけ。
「にゃああぅ…(ネコの手?)」
ネコになっちゃったって事か? オレ……マジに?!
よくよく見れば、足元…というか、自分の服の中に包まれて顔をひょっこり出した状態で……
大切な額当ても目の前に転がっていた。
ネコの手を伸ばしてどうにかこうにか額当てを掴むと、ぎゅっと抱えた。
「ナルト〜」
サクラが探しに来てくれたと、ナルト(ネコ)はフルリと周囲を目を配る。
(サクラちゃんならオレの事分かってくれる筈……)
「にゃあ!」
大きな声で返事をしてみるが、気付いても貰えなかった。
そうこうしているうちにサクラの声も遠のいていき、さすがに心細くなってしまった。
(このまま見つけて貰えなかったらどうしよう)
ナルトは意地になってにゃーにゃー鳴いてみた。
サクラの名前とか、サスケのバカーとか、腹減ったーとか意味の無い言葉を羅列してみたが、聞いてくれるものはいない。
聴覚のいいネコの耳でも気付かなかった。
目の前に現れて初めてカカシに気付いた。
「ナルト?」
名前を呼んで屈み込んでくる。
(やっぱり先生だ、こんなオレでも気付いてくれた)
ナルトは嬉しげにネコの声でカカシの名を呼んだ。
でもカカシが手に掴んだのは、ネコのナルトではなく脱ぎ捨てられた服の方。
(そりゃそうか……ネコを見てオレだと分かれってのがムリな相談だ)
服を掴み上げると、その中にいたオレがポロリと地面に落ちた。
「にゃっ!(痛いってば)」
怒ってみてもカカシ先生には分かってもらえないだろうけどさ、とりあえずオレの存在はアピールしとかなきゃ。
「…ネコ?…」
そっと首根っこを掴まれまじまじと見られる……腹とか背中とか、手足の裏まで。
「起爆札は付いてないな…」
そこでやっと、胸元に抱いてくれた。
(そりゃそうだよな、忍者たるものいかなる時にも注意は怠らないってばよ)
それでも視線はナルトの服。
地面の上にスッポリとナルトが抜け出たように置いてあったからだ。
キョロキョロと視線を周囲に向けるが、当たり前の事だがオレはいない。 だって、カカシ先生の腕の中にいるんだもんよ。
見つからないオレの捜索は諦め、カカシ先生はサクラちゃんとサスケを先に里へ帰らせる事にした。
「でも、ナルトはどうするんですか?」
「忍犬に探させるから大丈夫だ、匂いを辿れば直にみつかるさ」
それを聞いたサクラちゃんは安心したように肯いた。 そこで、ようやくカカシの腕に抱かれたネコのオレに視線を向けた。
「拾いネコ? キレイな毛並み…見たことない明るい金色してる、まるでナルトの髪みたい…」
そう云ってオレに指を伸ばして頭を撫でてくれた。
何の気無しに云った言葉だが、カカシ先生の中で何かが動いた気がした。
ネコの鋭敏な感覚でなければ分からない心の動きだ。
ふと先生を見上げたら、先生もオレを見下ろしていた。
二人が里に戻って行ったのを見送った後、カカシは幾つか印を結び忍犬を召還した。
ナルトを探す為かと思えば、そうではないらしい。
召還した忍犬はパックン一匹だけ。
「このネコの言葉が分かるか?」
『なんじゃ? 忍猫にでもスカウトするとか?』
「そんなんじゃ無いさ、元々この子は忍者だしね…」
パックンも驚いたが、ナルトネコも驚いた。 膝を付いて地面にネコを下ろしながらカカシはニっと笑った。
「にゃあううぁ〜(そうだってば)」
カカシの膝に擦りよりながら、ナルトは嬉しげに鳴いた。
パックンが話しかけてくる心の声を聞き取り、慣れないナルトは一生懸命なーなー鳴きながら状況説明をした。
言葉…というよりは、動物同士は心で意思の疎通をするってのを初めて知った。
『間違いなく、ナルトだな』
匂いも同じだと、カカシの手の中の服にも目を向けた。
「とりあえず里に戻ろう…事情を聞くのはそれからでしょ」
おいでと手を伸ばしてくれるカカシの手に、ナルトは嬉しそうに飛び乗った。
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