□変化
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(ナルトサイド)


非番の朝、いつもよりちょっと寝坊をして布団の中でまどろんでいた時……何か暖かいモノが蠢くのに気付き、オレは慌てて飛び起きた。

布団を撒くってソレを確かめれば、何も無い。

気のせいかと、ベッドの上で胡坐をかけばやはり背後でパタリと布団を叩く音がした。

バッと四つん這いになって背後を振り向いたら……やっぱり何もいない。

「なんだってばよ…気味悪いなぁ」

再びサワサワと太ももに触れるものに気付き、四つん這いの足の間から後ろを見れば………そこに揺れるのは毛皮の塊。

「何? 何だってば?コレ…」

咄嗟にベッドから飛び降り、等身大の姿見を覗き込んだ。

「げっ!」

正面から見てまず驚いたのは、頭から生える耳。 自前の耳の上辺り、金色の髪の中からにょっきりと生えるソレは、どう見てもケモノの耳。

そして、足の間から覘くのは、やはり金色の毛に覆われたふさふさの尻尾。 意識しないのにゆらゆらと振られているその様は、犬が警戒する時のような動きだった。

「何だ? オレってば、何かヘンなモノ食べたかぁ?」

昨夜は、新発売のカップラーメンだった。 ソレがあたったか?……って、そんな訳ないか。

「オレ、九尾化ちしゃったってば?」

ヤバイヤバイと生えた耳を押さえたり引っ張ったりしてみるが、当たり前の事だが取れる筈もなく……

下の方へ視線を落とせば、尻尾は自分の焦りが反映しているのかヘナリと力なく内股に垂れ下がっていた。

九尾化が頭にある所為か、考えは悪い方向へと向かうもので―――

「時間が経つと、尻尾が増えて……その内、我を忘れて暴れ出したりしたら……どうしよう!どうしたらいいってばよ〜っ」

部屋の中を意味もなくウロウロ――している内に、一人の面影が浮かんだ。

「そうだ、カカシ先生に相談してみよう…」

やはり頼るべきは、アカデミー卒業以来指導してくれているカカシなのだろう。

イルカはともかく、九尾を抑えるならヤマトの方が適任だろうが、その時浮かばなかったのは後々不思議に思う。

「カカシ先生なら、色々知ってるし…きっと……多分…なんとかしてくれる筈」

善は急げ、早速―――



いつもの様にズボンを履こうとして……履けなかった。

尻尾が邪魔でウエストまで上がらないのだ。

「ウソだろ〜っ」

涙目になりながら、ズボンの中に尻尾を納めてみるが、チンコの様には収まる筈も無く、あからさまに何か入ってますと云わんばかりに股の辺りが膨らんでしまう。

コレでは外にも出られない。

頭も同様、ケモノの耳が邪魔で帽子で隠そうにも帽子が浮いてしまうのだ。

ベッド下の収納を漁れば、普段はめったに着ないマントが出て来た。

木ノ葉忍御用達の白いマント。

これならフードが付いてるから耳が隠せるし、捲れなければパンツ一枚でも―――もし見られたら変態扱いされそうではあるが、この際やむを得ない。

「走らず隠れながら行くってばよ…」

オレはマントを着、目深にフードを被り顔を隠して部屋を出た。



表通りを避け極力裏道を歩いて行くが、こんな時に限って知り合いに出くわすもので、オレはスピードを緩めず気づかぬフリで行き過ぎようとした。

相手は立ち止まってオレを見ている――うう〜心臓が痛い。

「ナルト?」

「何かあった?そんな格好で…」

珍しく一緒にいる、いのとサクラだった。

バレてるよ〜何でバレるってば?!

ある意味有名人であるナルトが、マントを被った位でバレない筈もない。

「ご…極秘任務だってばよ……うん…」

「極秘?…私は聞いてないけど?」

不思議そうに云うサクラちゃんに、汗が吹き出る。

「オレ…オレだけだって…」

「任務で一人はないでしょ?…」

任務は必ず小隊で行動するのは、忍なら誰でも知っている。

「カカシ先生と、カンタンな任務だけど…極秘だ…てば…」

オレってば、嘘が下手だよな……

声が小さくなりつつ、マントの前を内側で押さえながらソソクサと二人の前を行き過ぎる。

背中に視線が刺さるのが分かるけど、無視無視。

追っかけて来ないので、まずは一安心。

顔を隠している所為か、唯の気の所為か、道行く人に見られている気がするってばよ。

普段は顔まで隠す必要なんて無いもんな。



そんなこんなで、やっとカカシ先生のアパートまで辿り着いた。

遠い道程だったな〜と……(ため息)

これでカカシ先生が留守だったりした日にはどうしたものかと思ったが、ドアの向こうから水の流れる音がしたから、躊躇無くドアをノックしてみた。




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