□ナルト女難?
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C貧乏くじを引く男
火影岩の向こうに上る朝日に照らされ、目を覚ます。
身体を伸ばして深呼吸……さて、とばかりに立ち上がり便所に入れば、ナルトは在るモノが無くて大騒ぎ。
直ぐに昨日の出来事を思い出したので、気を取り直し便座に座って用を足した。
(早くばーちゃん、戻ってこねーかな…)
いつもの集合場所に着けば、ヤマトが既に来ていて驚いた。
カカシの様に遅刻はしないものの、三十分前には来るナルトより早くは来た事は無い。
「ヤマト隊長、早いってば」
「いや、早朝にアカデミーの受付に呼ばれててね…」
昨日の任務も帰って来たのが深夜十二時過ぎてたのに――などとブツブツ云うヤマトに、ナルトは「ふーーん」と聞き流すだけだった。
『キミの所為だよ』とは云えず、ナルトへの嫌味にも愚痴にもならなかった。
「サクラから聞いたけど、キミの身体の事…」
「いやーたいした事ねーってば、ちょっと胸が腫れてるだけでさ……」
ニシシというナルトのいつもの笑顔から、視線を下にずらせば――いつものオレンジの服越しにも分かる膨らみが二つ。
腫れてるって……
ヤマトの知る女性らの中でも、上位に入る大きさではないだろうか。 いや、実物を見た事のあるのは極一部のくノ一ではあるが。
肌の露出の少ない服故に、胸以外では女性の身体とは分らないが、足首や首筋…僅かな露出部分がほっそりとしている気がするのは気の所為か――
下手な事をナルトに云って、後々カカシに制裁を加えられても寂しいので、この件についてはそれ以上ツッコムのは止めた。
誰が好き好んで、同僚に命を狙われる真似をするものか。
ヤマトとて、まだ命が惜しいのだ。
「……今日は木の葉から南にある海沿いの街に密書を届ける任務だが、ボクたちの足でも往復で二日の行程になるから……」
任務内容の説明途中、ヤマトが不意に黙り込んだ。
「隊長? どうしたってばよ…」
小首を傾げて、ヤマトの空に向けられた視線の先を吊られて見上げてみた。
「何かあんの?」
(一泊……よりによって、こんな任務にナルトと二人……それも今回は女の子バージョン……今は任務中で何も知らないだろうけど、後で知られたりしたら……ナルトに傷の一つもつけようものならボクなんて瞬殺されちゃうんだろうなぁ……ああ、短い人生だった……)
雲ひとつ無い空を見上げ途方に暮れているヤマトの脳裏に浮かぶは、自分の人生の終焉。
被害妄想の激しい男だった。
「ヤマト隊長ってば!」
ナルトの呼ぶ声に我に帰ると、ヤマトは取り敢えず任務に集中する事で現実逃避する事にした。
「すまない……えっと、密書を渡すまでに敵の忍からの攻撃が懸念されることから、今回は二人で行う。 敵の襲来にあたっては、その場で指示をするからね。 無事密書を依頼先に渡した後は野宿で一泊……分かったかい?」
「了解!」
敵の襲来と聞いて俄然やる気が出たらしいナルトは、目を輝かせて出発の合図を待っている。
ヤマトは深〜〜く溜息をついたあと、言葉無く指で出発の合図を出し、二人は小さな砂煙を残して走り出した。
【続く】