□ナルト女難?
5ページ/30ページ
D里一の忍
三日間の任務も、日程の半分以上が往復の移動時間だったので、メンバーらも半日走り詰めではあったが息一つ乱さず阿吽門に着いた。
カカシは門番の当番である後輩に、手を上げて挨拶を交わす。
ある意味有名人で、仲間想いのカカシを慕う忍は多い。
今日の門番も、さり気なく情報を伝えてくれた。
それによれば、今朝カカシ班としてヤマトとナルトが任務に出たという。
決してカカシが頼んだ訳では無い。
ナルトが下忍になりたての頃から、カカシがあの九尾の子供を大切にしてきたのを知っているし、そんな不憫な境遇の中であっても真っ直ぐに育ったナルトにも同情を通り越し親しみを感じての行為なのだろう。
カカシは額当てに隠れていない右目を弓なりに弛めて、短く『ありがと』と礼を云った。
報告書をアカデミーの受付に出しに行けば、火影たる綱手は留守で、明日の任務予定は「人生色々にて待機」…との伝言があっただけだった。
五影の会議があるのは知っていたので、カカシはさして疑問にも思わなかった。
綱手がいない場合、バックアップを任されているシズネが上層部と計って任務の割り振りを決めているから、余程の急ぎで無い限り当日に云い渡される場合が多い。
カカシは了解の旨を伝え、家路につく。
……とはいえ、帰ってもナルトがいない家では、自分の夕飯も作る気も起こらない。
カカシは帰りがけ、商店街でビールと惣菜を買って帰る事にした。
お互い一人だと、食事も等閑になりがちだ。 カカシがいない間、ナルトも同じ理由でカップ麺で済ませている光景が安易に想像できる。
ドアを開ければ、散らかった室内に『帰って来た』と感慨にふける。
すぐ目に入るキッチンには、想像通りカップ麺の器と、コーヒーカップ?
来客用として置いてあるそれは、誰か来たという証しで――
オレの客が此処に来るというのは有り得ないから、そうなればナルトの客…となるが……
子供の頃ならいざ知らず、この年になれば同期の友人らも各々任務を貰って働いているから、わざわざ家に訪ねて来るのも考え辛い。
悩みつつ衝立の奥へと入って行けば、ベッドに起き抜けに放り投げたパジャマが散乱していて、朝の様子がまざまざと浮かび、カカシの頬が笑みに緩む。
さっきまでの悩みは取り敢えず棚上げする事にして、ソファーにリュックを置き風呂へと向かう。
三日間の汚れを落とし部屋に戻れば、ベッドに腰掛け買って来たビールを開け一気に煽る。
やっと人心地ついて、テーブルにビールを置いた時、足元に落ちているモノに気付いた。
男所帯であるこの部屋に、ある筈の無いモノ。
カカシとしては、遥か昔に自分の周囲をウロウロしていた女が身に着けていたモノに見える……所謂『ブラジャー』だ。
目に見えていながらも、脳がソレを拒否している。
拒否しながらも、忍としての習性か、グルグルとナルトとの因果関係を探り出す。
(女を連れ込んだ?…女に誘惑された?…なし崩しにこのベッドで?…女と?…遅まきながら春情期か?…思春期の過ち?…)
カカシの脳裏には、愛読書のイチャパラシーンがまざまざと浮かび、
それによって導き出された答えは――
「浮気?」
里一の忍、カカシの思考はそこで停止した。
【続く】