□目を閉じて
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「教えてあげようか……楽になれるよ……」
耳元で囁かれる言葉は、耳以上に身体を震わせた。
肩を竦めて、ナルトは身を走る快感をやり過ごす。
「……目を閉じて……オレの声だけを聞いてて……」
ベッドの上で背後から横抱きにされた状態では、ナルトの抵抗は高が知れるというもの。
忍装束の上から下半身を掴まれていたのが、カカシの手がいつの間にかウエスト部分から素肌に差し込まれ、硬く形を変えた中心を握られていた。
「…っは……っ…」
耐え切れずに声が洩れた。
「一人でする時は、ココの括れを…」
カカシの掌が、ナルトの芯を擦りながら、先端の括れを指で刺激してくる。
「やっ…やだ、止……離し…て…」
上擦った声を上げ、未知の感覚に耐えながら、ナルトの震える手がカカシの手を押さえて押しのけようと試みる。
声と同じ様に力が入らないだけに、カカシの手を退かす事は出来なかった。
「どうして?…気持ちイイでしょ、こんなになってるのに……」
「知ら…ない…んなの……せんせ…が……」
「オレのせい?…じゃあ、ナルトが自分でしてみる?」
あっさりと離れていく、カカシの手と背後の温もり。 最初はホッとしたものの、段々と下半身を中心に疼きと熱が高まっていく。
腕で火照った顔を隠すようにしながら、同じベッドの端に座るカカシをそっと覗き見た。 カカシも手の届くところにいながら、優しい笑みを穿いた目を向けてくれる。
「ほら、見ててやるから…」
やってみろと云わんばかりに顎を杓くる様子は、目元の笑みすら作り物に見えた。
こんな目にあっていながら、何も云い返せないし、一発殴ることすら叶わない。 興味本位で口にした薬剤のせいで、殴るどころか身を起こすことも出来ないのだ。
カカシに背を向けたまま、ナルトは顔を隠して更に丸く縮こまった。
小刻みに震える肩は、泣いているせいか……
「ゴメン…ナルト……」
そっと髪を撫でられ、指に絡める様にかき上げ……そっと米神に唇を押し当ててきた。
「…前からお前が好きだから、そして触れたいと思ってた……抱きたいとも思ってたから……今、結構…我慢の限界……」
いきなりの告白に、ナルトは息を飲む。
そんな目で見られていたとは、正直思いもしなかった。
「さっきは意地悪な云い方しちゃったね、ゴメン……そして……」
カカシの声が近づいてきたかと思ったら、一拍置いて耳朶に唇が触れる程近くで降ってきた言葉に―――
ナルトは微かに肯いた。
肯いたとはいえ、諸手を広げてカカシを迎えることは恥ずかしく、ベッドに転がったまま衣類を剥がれる羞恥に耐えた。
自分の身体と違って傷一つ無い肌に、カカシはじっと見惚れた。
任務の度にあちこち怪我をした筈の身体。 体内の九尾の力の所為か、何も残っていない。
さっきと同じ様に横抱きにされて、背後から手を回してナルトの中心を弄る。
「恥ずかしい?……顔を見ないでいるから……」
思うまま声を出して、感じて、強請って―――本当のナルトを見せて―――
「ぁ…ん……ん……」
喘ぎ声を漏らすまいと自分の指を噛んで耐え忍ぶ様は、今だ羞恥が抜け切れないせいか。
初めての行為だ、どうしたって恥じらいは消えないだろう。 快感をやり過ごそうとしているのか、足の指先が忙しなくシーツの上を泳いでいる。
カカシの腕に縋った片方の手が、きつく爪をたててくる。 口から溢れる息は段々と熱くテンポが上がり、遠からず頂を迎えることは確実だった。
「もう少し、我慢できる?」
乱れるナルトをまだ見ていたくて、少し意地悪を云ってみる。
汗が散る程に首を打ち振り、首を仰け反らせた。 汗とも涙とも付かぬ水滴が首を伝う。
「…も……ムリ、出……」
背中からすっぽりと抱く格好でいる為、首を反らした事でナルトの表情が見て取れた。
きつく閉じた瞼に金色の睫毛、戦慄く眉、開いた唇………これだけで夜のオカズになりそうなビジュアルに、忍装束に今だ包まれた己が男もはち切れそうだ。
「イきたい?…ナルト…」
「…っき……いぃ……」
言葉にならない悲鳴を聞いて、カカシはナルトの中心を更に煽るように擦り上げた。
煽られ、焦らされ、ようやく迎えた絶頂に、ナルトはそのまま気を失うように眠ってしまった。
元々カカシも最後までする気もなかったから、それはそれでよかったのだが―――
行為の途中に『触れていいか』と聞いて肯く事で了承を得たものの、カカシ的に恥ずかしい告白に対する肝心のナルトの返事は貰っていない事に気付いた。
「嫌われて……ないよね…?」
勿論、ナルトの返事が返る事はなかった。
胸に抱いたナルトの背中の温もりを感じながら、眠れぬ夜を過ごした。
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