□ネコ
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(カカシサイド)


里に戻ったカカシとナルト(ネコ)は、まず最初に火影の元へ赴いた。

腕に抱えたナルトの服と金色のネコを見て、猿飛も開いた口が塞がらない様子だった。

「変化の術は本来、術者本人が変化するものじゃがな…」

他人を変化させるとなると相手は結構な使い手、火影様は幻術系の新術では…と記憶の中の類似した術を思い出そうと頭を抱えた。

腕の中のナルトもみゃーみゃー鳴いている。

通訳のパックンを連れてきていないので内容は分からないが、術を解いてくれるであろう火影様へのエールを送っているのか。

お願いとか謝罪とか、ナルトの頭には無いのは確か。

カカシは、思わずナルトの口を塞いだ。




調べ物は火影様の直轄の部署にオマカセして、ナルトを自分の部屋に連れ戻った。

ネコの姿では、一人…いや一匹で何もできやしない。 せめて戻るまではと連れてきたものの……

初めて来た場所への恐れなど皆無らしく、あちこちと覗いて回る。

ベッドの下に転がっていた巻物を埃だらけになって追いかけたり、そのままベッドの上に上がろうとしたり、退かそうとして伸ばした手を踏み台にして枕元の棚の目覚し時計を引っくり返し………

「ナルト! 落ち着け!!」

すばやく落ちかける目覚しと棚の上のナルトを掴み、目覚しは棚の上に、首根っこを捕まえたナルトはバスルームの中に放り込んだ。

いつの間に沸かしたのか、風呂桶の中は暑い湯が満たされ……

「にゃあああぁっ(熱い熱いっ!)」

ネコの断末魔の叫びというのはこういうものかと、カカシはヘンな処で感心した。

「ネコなんて飼ったことないからな……ちょっと熱かったかな、湯」

忍犬の世話は得意なんだが。

カカシは湯の中で溺れているネコを掬いあげ、タオルで水気を拭いてやった。




「今度騒いだら、屋上に置き去りにするよ」

「にゃあ」

ベッドの上でネコに説教する図など、誰にも見せられない構図だ。

ネコとは云え、元は人間…ナルト。 云えば言葉は通じているらしく、目の前のネコはお行儀良く座って肯いた。

ネコが何を食べるのか分からなかったが、適当な野菜を煮たものを与えた処、最初は嫌そうにしていたものの、食べてみて口に合ったのか残らず平らげてくれた。

もしコレを食べなかった時は、熱々のカップラーメンを食わせてやろうかと思っていた。 『猫舌』のナルトがどんな表情をして食べるか、笑えるシュチエーションだったろう。


食後、ベッドの上で転寝していたナルトを起こし、パックンも呼び出した。


事の成り行きをパックン伝に聞けば、拾った数珠のような輪を左手首につけてみた時に異変は始まったらしい。

ナルトの左前足をとってまじまじと見れば、僅かに感じる呪印術の痕。

自然石に施された呪印と変化の複合術だろう。 石が見えなくなるようにする処なぞ芸が細かい術だ。 でなければ、数珠が丸見えでは解印も容易だからだ。

この程度の封印なら、手元の巻物でなんとかなるか…と、棚の引き出しを漁り目当ての巻物を探す。

「これでなんとかならなきゃ、明日火影様の書庫に探しにいかなきゃな」

「ぅな〜〜」

心配そうに見上げてくるナルトに、いつものように笑いかけながらそっと頭を撫でる。

「大丈夫だよ、時間はちょっと掛かるかもしれないけどね」


ベッドの上に広げた巻物の上にナルトの身体を乗せる。

「じっとしてろよ」

返事を待つことなく、手を合わせ幾つかの印を結んでいく。

巻物の上のナルトも最初は興味深げにオレの印を見ていたが、その内目で追えなくなったのかあくびをしながら寝そべってしまった。

チャクラを練り上げ、摺り合わせながら、ナルトの腕の術の解ける隙間を探っていく。

普通はソレを得意とする部署の忍に任せるものだが、ナルトは自分の手で助けてやりたかった。 

嘗ての師の忘れ形見であり、

部下であり、

なにより、他の誰よりも気に入っていたから―――

今でこそ先生と生徒であり、唯の師弟関係だが、それ以上に大切な存在になっていた。

その感情がその内どう変わっていくか分からないが、今はナルトを慈しみ育てていきたいと思う。



集中し閉じていた目を見開く、その刹那ナルトの姿が元の人間へと戻っていた。

当たり前な事だが一糸纏わぬ裸で……

「しまったなぁ…さっき洗濯しちゃった」

元に戻った事に気付かず、ナルトは巻物の上でぐっすり寝入ってしまっていた。

左腕には割れた石の欠片がついていて、起こさないようにそっと呪術の欠片を取り外し、チャクラを練って握りしめたら石は砂の様に砕けて散った。

こんな仕掛けの石を使う隠れ里は、限られてくるけどな。

しかし……何故、ネコ?

色々疑問は残るが、今日はこのまま寝てしまおう。




金色の髪を一撫ぜしながら、ナルトの痩せた身体を抱き寄せて布団に潜りこんだ。


「寝相、悪くはないよな?」






夜中、二度程ナルトの蹴りを腹に受け目を覚ました。







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