□ナルト誕生日
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(ナルトサイド)


誕生日なんて、いつも過ぎてから気付く程度の行事だった。

幼少の頃はもとより、アカデミー(忍者学校)に入るまでは、日が暮れるまで近所の子供らと遊んだくらいの記憶しか持ち合わせていない。



初めて誕生日を祝ってもらったのは、イルカ先生。

お馴染みの一楽ラーメンで味噌チャーシュー大盛りを奢ってもらって、イルカ先生のドンブリからチャーシューを分けてもらった。

奢ってもらうのはいつもの事だったが、言葉にしてもらうとそれだけで嬉しかったってばよ。


サクラちゃんは、おめでとうの言葉と笑顔をくれたっけ。

それだけでオレは天にも昇る気持ちだったが、その後隣にいたサスケが『ふん』と鼻を鳴らしてソッポを向いたものだから、この気分も台無しだったけど。



その後は任務が立て込んだり、エロ仙人と修行に出てたりと、祝われる機会も無く数年が過ぎた。

16歳の誕生日。

この年は、オレにとって忘れられない誕生日となった。

ちょうど非番のその日、カカシ先生の部屋にオヨバレしてしまった。

部屋に呼んでもらえるなんて初めての事で、ドキドキワクワクで部屋に足を踏み入れた時の第一印象は、キレイに片付けられてるってコトだった。

ベッドの棚にはオレ達カカシ七班の写真と、同じ様な構図で撮ったであろうカカシ先生の子供の頃の写真が飾ってあった。

「これってば、カカシ先生だよな?」

「そうだよ…生意気そうだろ?」

可愛げの無いガキだったけど、と先生は笑った。

「そう…でも、ないよ……」

なんて答えればいいのか分からず、さし当たって無難な言葉を漏らす。

オレが云うのもなんだけど、もう一人とソッポを向いている様子がオレとサスケみたいで笑った。

「カカシ先生の先生てば、もしかして火影四代目?」

「そうだよ、火影になる前だけど…」

優しそうな人。

カカシ先生がお手本にした人なら、きっと強くて優しくて―――

「…会ってみたかったな…」

ベッドの端に座って写真を覗き込んでいたオレの呟きに、先生も隣に座ってオレの肩越しに写真をちらりと見ながら云う。

「あっちも、そう思ってたさ…」

「え? 何だってば?」

「何でも……それより、誕生日おめでとう、ナルト」

オレは突然の事に驚き、カカシ先生を振り返った。 思ったより近くにあった先生の顔にも驚いた。

「サ、サンキュー…ちょっと驚いたってば……」

「プレゼントを買う暇は無かったけど…ゴメンネ…」

眉をハの字に曲げて云う先生に、オレは慌てて首を振る。

「そんな……オレの誕生日を覚えていてくれただけで……そうそう、カカシ先生の誕生日っていつ? お祝いしなきゃ…」

「過ぎちゃった……」

9月だったと聞けば尚更ガッカリした。 来年まではお預けか。

「何が欲しい?」

カカシ先生がそう云うと、ちらりと脳裏に浮かんだモノがあった。

――云っちゃおうかな…
――云ってもいいよね…

「カカシ先生……」

――と過ごす、来年の誕生日――

…と、云おうとして、それは言葉になる前にカカシ先生の唇で塞がれてしまった。

今の状況が分からなくて、オレは先生の唇に翻弄されるまま固まる。 そのうち信じられない事に、口から舌が割り込んできたもんだら、ついついカカシ先生の腕を掴んでしまった。

「オレが欲しいのは、ナルトだよ」

「え?……オ、オレ?」

――ホシイって? 何?……

「くれる? お前の全て……」

――くれるって? えっと、どー云うコト?……

「ナルトをくれたら、オレも全部あげるよ」

――カカシ先生を? くれるの? オレのモノ?

「うん……ちょうだい…」

つい云ってしまった返事に、カカシ先生が嬉しそうに笑って抱きしめてくれた。

先生を欲しがった理由と、先生がオレを欲しいと云った真意を、もうちょっと考えて返事をすればよかったかもしれない。



ちょっとだけ後悔したのは、ベッドの上で素っ裸にされた時。



大いに後悔したのは、昼から日が暮れるまでベッドの上で泣かされた後。

それでも、来年の誕生日は、二人で祝おうと約束も貰った。

約束通りカカシ先生はオレのものになった。





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