アイアム平凡ッ!
□第一話
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「離せ」
「へ?」
「倉本を離せ」
「は、はいッ!」
大ちゃんがビクつきながら、俺を離す。ようやく、地にきちんと足をつけることができた。
し、死ぬかと…
「お前…」
「はいッ!」
「……いや、倉本」
「ふみゃいっ!?」
あ、あまりの怖さに、変な声でた…。
「〜〜ッ、か、帰るぞ」
「あ、は、はいっ!」
八雲さんは、サッと踵を返して早々と歩いていく。俺も、カバンを取りながら、放心している大ちゃんに別れを告げて、慌てて八雲さんの後を追った。
「……」
「……」
誰もいない静かな廊下を俺達は何も話さず歩く。
「………」
「…………」
…しかし、あれだ。沈黙辛い。
どうしよう、な、ななななんか話題…!
俺は悶々と考えた。
考えた結果──…
話す以前に話し掛けられない!という問題に直面した。
でも、沈黙も辛いから勇気出そう。頑張れ、俺!
「ぁ…あああああの!」
どもりすぎた…等と後悔してる間に、八雲さんが無言でこっちを見た。
…やはり改めて見ると八雲さんの顔は、とても整っている。いわゆる、イケメンの部類に入るだろう。……恐いけど。
「えぇと、そ、その…」
「………」
「っ………」
話題を考えている間に、八雲さんの眉間に皺が寄った。
それを見た俺は、迂濶にもビクついてしまった。
やっぱ、恐いぃぃ…!
「…ォイ」
「はっ、ハイ!?」
「………ぃ、か」
「………へ?」
「俺が……恐いか?」
突然の質問に、俺は足を止めてしまう。数歩進んで、八雲さんも足を止め、上半身だけ俺の方に向けた。
「ぇ、ぇっと……」
「正直に言え」
「…こ…恐い、です…」
「っ……そ、うか…」
答えを聞いて、八雲さんは一瞬苦しそうな顔をして、また足を動かした。
そしたら俺は、無意識の内に──…
「でも!」
叫んでいた。