俺についてこい!
□新入生歓迎会!
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『まぁとりあえず、鬼もあと30秒で動くよ〜♪』
唐突に告げられた残り時間に、俺と隆司は思わず声をあげた。
いつの間にそんな時間たったんだよ!
『あ。ちなみにカメラは開始と同時に切るけど〜、あと20秒で他の場所に移動しないとマズイよ〜?今まで、俺たちは見てたんだからね〜♪』
「マジかよっ!」
「隼人、走ろうっ」
「おうっ!」
『鬼さんたち〜…
スタート!』
ブツ、と回線が切れた音を背後に、俺たちは、再び猛ダッシュを開始した。
「隆司っ、ここっ!ここ入ろうぜっ!」
「っうん!」
校舎の中を走り回り、行き着いた先は"第3科学室"だ。結構奥の方にあってあまり使わないらしい。
バタンッ
ガタッゴンッ
「っはぁあ…」
「ふぅ…」
勢いよく閉めた教室の扉を近くにあった物で開かないようにする。くたぁ…とその場にしゃがみこむ俺と隆司。
「つ、疲れたね…」
「っあぁ…」
流石にこの長い距離を全速力はキツい。額の汗を体操服で乱暴に拭い、乱れた息を整えようと深呼吸してから隆司へ視線を向ける。
…さて、どうやって逃げ切ろうか。
「……どうする?」
「……走る?」
「ムリ。体力がもたん」
「…だよね」
疲労のせいか頭は回らずに、息切れで上手く呼吸も出来ない。
淡々と会話をしては、沈黙。
「…なんか作戦たてるか?」
「…何か案があるの?」
「いや、ない」
「……だよね、俺も」
……そして再び沈黙。
「ちと、寝てい?」
「え゙。この状況で?」
「………寝らんねぇな」
「…だよね」
現実逃避として適当に口にしてみたものの、あっさりと隆司に折られてしまった。困ったような笑みで。
作戦は思い付かないし、ここにずっと固まっているのも危険だ。
「どうしようか」
「やっぱ作戦たてるしかないよね」
「…作戦会議、すっか」
「うん」
とにもかくにも、二人で頭を捻れば一つくらいは良い作戦が思い付くだろうと、俺達は顔を見合わせて頷く。
…またまた現実逃避に、どこでも扉があったら便利だよな、なんて思いを馳せたのは、内緒だ。