捧&宝物
□最強の平凡ズ
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僕は思わず素早い速さで自動ドアの前を数回踏んでコンビニの中へ舞い戻った。
戻ろうとしたんだけど…。
ドン
ドカ
「おわっ」
「あわわ?」
い、今のはドアから出て来たお客さんと僕がぶつかったようで尽かさず謝ったら向こうの人も謝ってきた。
多分、僕が悪いのにコンビニ袋に入った中身が散らばってしまってその人は屈んで拾ってくれた。僕も慌ててコロコロと転がってしまったプリンを拾う。
目線を上げると黒髪で眼鏡を掛けた―…なんとも僕と親近感を持つような平凡の人で……あ、もしかしてさっきコンビニに入ってきた人かも?
「ご、ごめん、あ、プリン、崩れてないですか?」
「あっ!だ、大丈夫ですっ!崩れても、た、食べれば一緒だからっ あ、ありがとうっ、と、言うかす、すみません、僕…っ」
「え、でも…。あ、俺の方こそ本当にごめんね。何か突き飛ばしちゃったみたいで!」
お互い頭を下げてコツンとくっついたままお辞儀をした。
優しい人だなぁ…。
「お゙ぃ。何やってる」
ビックーン
「は、はははいっ?!」
い、いい今、凄みを利かせた低い低い威圧的な声が僕の後方で響いた。
「あああああご、ごごめんなさ「八雲さん!俺がちょっと前方見て無くて巻き込んじゃたんです。…その、待たせちゃってすみませんっ」
「イヤ……別に、謝るな」
あ、ちょっとそっぽを向いた。
「あ、は、はいっ!!」
「巧己、行くぞ。ん」
「え、えっと手、でぇすか//」
「ほら」
「ほぁい…っ!」
「! お前…っ早くしろ//」
………あ、あの極めて普通の人と、あの最恐の不良さまとは、と、友達なのかな?
突然、鋭かった紅い瞳が優しく緩んだ。
紅い不良さまと手を繋いで行く二人を僕は唖然として見送ったんだけど……仲の良い二人を見てると明くんを思い出してちょっぴり寂しくなった。
拾ってくれたコンビニ袋を片手に持ち直して、僕は駐車場を横切ろうとした。
キキー―ッ
駐車場の隅を歩いていた僕の方に車がやって来て、もう目の前は逃げ場が無いほど近づいていた。