捧&宝物
□最強の平凡ズ
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車のブレーキ音が鳴り響く。
その音が遠くにだんだん遠のいて行って、僕の体が突然何かの衝撃に当たった。
クッションがあるようにほわっとしてたからそんなに痛くない。
でも何かに衝突したような感覚があって、恐る恐る硬く瞼を閉じていた僕は目を開けた。
そこには真っ赤な髪が見えた。
そしてその人の腕からは、赤い血がポタッと垂れていた。
「…痛」
「や、八雲さんっ!!」
さっきの最恐の不良さまが僕を車から救ってくれたんだ!そ、それも怪我をして…っ
慌てながら眼鏡の平凡くんも駆け寄って来た。それもとても心配そうに。
「あ、あのあ、あ、ごめんなさ、ありがとうでも、ご、ごめんなさ……っ」
僕は蒼白になりながら慌てて謝るけど、言葉が上手く言えない。
「八雲さん! ど、何処も何ともないですかっ!?」
「…ああ」
落ち着いたようにそう言いながら、怪我をしてる腕を上げて何をするのかと見ていたら、自分の舌を出して第二関節辺りの腕に真っ赤な血が線上に垂れているのをペロッと舐めちゃった。
ちょ、ちょっとその媚態に感じる仕草がドキドキした……あわわ、こんな事考えちゃうのってふ、不謹慎だぁぁぁ!
「巧己、落ち着けかすり傷だ。てかお前、ぼぅっとしてるな」
ぼ、ぼぼ僕に言ったのかな、だよね??
「は、はいっ、すみませんでしたっ」
僕は最恐の不良さまにホールドされたまま、頭をペコンと下げてお礼を言った。
「う、うん、でもホ、ホント、心臓停まるかと思ったっ!二人とも、はあ…無事で良かったよっ!」
へなへな〜と巧己と呼ばれてた平凡くんがその場に座り込んだ。本当にごめんなさい。
そう思った瞬間だった。
ヴォンブォンブォン
今度は、こっちに向かってバイクがやって来たんだ!!でも、あれは、あの赤いバイクって、
「あ、明くん!?」
「あ゙?」
何故か、最恐の不良さまにまた睨まれた。
「え?……あ、あの? あ‥ああ"彰"って…その、し、知ってたの!?」
不思議そうに明くんの事を巧己くんに聞かれたので、僕は顔の頬が熱を帯びたように感じたけど、正直にうんって返事をした。
意味は無いのに、何だか照れてしまう。
「……たくっ!」
明くんはいろいろ顔が広いから知ってるのかな?…ち、違う意味だったら恥ずかしいけどっ
「お ゙ぃテメェ!!光輝から離れやがれ!ゴラァァァ!」
それから、もう人間の尋常の速さではなくて疾駆にてこっちにやって来た明くん。
バイクを乗り捨てて跳び蹴りをしてくる足が瞳に映りながらも、その猛烈な気迫と恐声を上げる明くんにビックンと体が跳ね上がってしまって、最恐の不良さまに思わずしがみついてしままった。
「ア ゙?――光輝、浮気かよ!?」
「う、ううう浮気ですかっ、や、八雲さんっ!?」
同時に何やら…明くんと巧己くんの声が響き合っていた。
「あ?」
「ふへ?」
僕も、変な事を言うものだから、何故か最恐の不良さんと一緒に気の抜けた声を発してしまったんだけど。