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□いつものように
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あぁ……
平穏とは、何故こんな───なんだ…
「お兄ちゃんおはようっ!」
「ぅおっ!?……おはよ、巧真」
いつものように飛込んでくる巧真。朝から元気だなぁと感心してしまう。
「やっば!遅刻遅刻っ!」
「お兄ちゃん、お弁当!」
「あ、ありがと巧真っ!じゃ、行ってきますっ」
「いってらっしゃーいっ」
いつものように笑顔の巧真に見送られて玄関を飛び出る。
「おっはー!なぁ巧己ぃ、聞いて聞いて!昨日なぁ……」
「おはよ、大ちゃん。あ、そうだっ!お前、あのゲーム返せよ?」
「あっ!いっけねぇ……あれなくしちゃった…テヘ☆」
「ぬぁあにぃぃっっ!!?」
「うっわ。巧己ごめんてっ。だから叫ぶなよっ」
いつものように騒がしく始まる学校。
大ちゃんとのお喋り、じゃれっこ。そして、みんなで楽しく笑う。
「でだなぁ……あのゲームの最後…」
「あ、バカやめろよっ!俺、まだクリアしてねぇんだぞ!」
「あははっ。わりーわりー!」
「大ちゃんのバカっ」
いつものように帰る道、怒る俺に笑いながら謝る大ちゃん。
「じゃあまた明日なっ」
「うん、バイバイッ!ゲーム返せよなぁっ!」
「探しとくーっ!」
いつものように手を振りながら笑顔で大ちゃんと別れて、家へと向かう。
「ただいまぁっ」
「おかえりなさいっ」
「うん、ただいま。巧真、今日は夕飯何がいい?」
「僕オムライス食べたいなぁ」
いつものように笑顔で出迎える巧真。それに応えるように俺も笑みを浮かべて巧真の頭を撫でてキッチンへ入る。
「おやすみなさい、お兄ちゃんっ」
「ん、おやすみ」
いつものように夕飯を食べてお風呂に入って、巧真と挨拶を交してベッドに入る。
「はぁ……今日も平穏…」
いつものように目を閉じて夢の世界へと旅立つ。
毎日、同じことを繰り返してる。
毎日、同じ人と顔を合わせてる。
毎日、同じようで少しだけ違う。
毎日、同じ人と違う話をする。
あぁ……
平穏とは、何故こんな興味深いものなんだ…
「父さん……」
一人の悲しみは誰にも伝わらず、
大勢の喜びは誰にでも伝わる。
「…会いたいよ……」
「…俺も……誰かに甘えたいんだ……」
そして今日も、
いつものように、
一粒の涙は溢れる。
誰にも知られずに。
涙が一粒、
─────暗闇に落ちた。