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□神様との約束と願い
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「初詣、行こぉっ」

午前零時。実家の豪邸の私室で、亜紀は「明けましておめでとう」と言う前に言った。

「………明けましておめでとうございます」

「うん、おめでとぉっ。じゃ、着替えよっかぁ」

私が言えば返すものの、その言葉はとても軽くて、私はすぐ腕を引かれた。少しよろめいたけど、すぐ体勢を立て直し仕方なくついていく。

「ちょ、着替えるって何にですかっ」

「もち、着物だよぉ」

「えっ」

今にでもスキップしそうな足取りで楽しそうに笑む亜紀の言葉に嫌な予感しかしない。絶対、亜紀なら言いそうな…。

「女物だけどねぇ」

「っ、亜紀!」

やはり、言った。多分お祖父様に頼んだのだろうけど、お祖父様も何故用意するのだろうか。男の私達が女物の衣服なんて。

「はぁ……何で…」

「早く早くぅっ」






「……あの…」

使用人達が私を押さえ付けるようにして着せた着物は、やはり女物。嘘であってほしかった。帯がきつくて苦しいし、肩が重いし、それに……、

「……スースーして落ち着かないんですが…」

「あぁ仕方ないよぉ。だって着物の時は下着の線が出ちゃうんだよぉ?」

「………」

そう、私は下着を着てない。裸の上に着物を羽織った。
男は下着の線なんて出ないと思うけど。トランクスだし。………確かに履いてて違和感ありそうだけど。そんなことを思いながら少し足を擦り合わせる。

「……というか…」

「なにぃ?」

亜紀が上着のチャックを上げながら私を見て首を傾げる。……"上着のチャックを上げながら"。

「何で貴方は私服を着ているんですか」

「だって着物苦しくて嫌だもん」

「……即答ですか」

さらっと言う亜紀に頭を抱えた。ここで何故私だけ着物なのかと聞いても、亜紀の気まぐれといった感じの答えしか帰ってこないだろう。だからと言って脱ごうとしても亜紀に抑えられるだろうから無駄だ。

「よし、由紀ここ座ってっ」

将来大丈夫だろうか、なんて考えながら溜め息をついていると化粧台の前の椅子をぽんぽんと叩く亜紀に意識を戻された。

「はい?何するんですか?」

「いいからいいからぁっ!ずっと目は閉じててねぇ」

椅子に座り首を傾げながら言われた通りに目を閉じる。真っ暗な世界の中、耳元でふふっと亜紀の笑い声が聞こえた。






沈黙が続く中、髪を触られて何をされてるか分からないまま亜紀から「開けていいよぉ」と声がかかった。す、と目を開けると目の前の鏡には、軽く髪をアップにして簪をつけた私の姿があった。

「っ……」

「どぉ?かわいいでしょぉ」

にこにこと楽しそうに笑う亜紀とは反対に、何処か女の子に見える自分の姿に私は目眩を覚えた。
ヘアアレンジが得意だからって私にやってほしくなかったです、亜紀さん。
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