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□‐UNIFORM‐
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「six to love!ウォンバイ橋本!」
「きゃぁぁあああっ!」
「お疲れ、橋本」
「うん、ありがとう」
仲間からタオルを受け取り流れる汗を拭う。
今日はテニス部の試合の助っ人。6‐0で俺の完全勝利。
ここまでの成績は、ダブルス2が4‐6で勝利、ダブルス1が7‐5で負け、シングルス3が6‐2で負け。そして俺、シングルス2が0‐6で勝利。
「…二対二……良い勝負だね」
俺は楽しくて、そう呟いて微笑んだ。
周りで相手校の生徒と学園の生徒達が歓声をあげている。興味のない人には煩いだけのその声も、俺にはただのBGMになっていた。
ベンチに座るとカタン、と隣の選手が立ち上がった。……テニス部の部長の咲田だ。咲田部長は楽しそうに微笑みながらラケットを持ち、俺の方を向く。
「橋本、ありがとうな。いつも悪ぃ」
「そんなことないですよ!俺は好きだからやってるんです。逆に俺の方こそ、いつも助っ人に呼んで頂いて…」
突然礼を言ってきた咲田部長に俺は慌てて言う。こっちの方が感謝したいくらいなのに。
そう言うと、「お前がテニス部に来てくれたら良かったのにな」と冗談のように言って、咲田部長はコートへと入っていった。
「seven to five!ウォンバイ咲田!」
「きゃぁぁぁぁああっ!」
「よっしゃぁぁああっ!」
咲田部長が勝った。生徒たちは先程とは比べ物にならないくらいの大きな歓声をあげる。咲田部長の元へと部員達が駆け寄った。みんなでハイタッチをしているのを、俺はベンチに座ったまま嬉しそうに見つめていた。
あぁ……ただの練習試合でも、勝利はここまで嬉しいものなんだ…。頑張って仲間と取った栄光。それだけで、もう───。
「咲田部長、お疲れ様でした。おめでとうございます」
俺は部長を囲む部員たちを見つめながら呟き、テニスコートを後にした。
あの時も、こんな気持ちでいたかったな。
晴々とした、こんな気持ちで───。
──俺は明隆学園テニス部の
ユニフォームを脱いだ。