俺についてこい!
□疾風の姫親衛隊!
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「…っ…ん…?」
「…気付きましたか?」
重たい瞼をゆっくりと開けば、ボヤける視界の中に見たのは真っ白な天井、そして鼻につく薬品の臭いに、此所が保健室だと分かった。
武井先生の低い声に返事をする余裕もなく、思考がまとまらない頭を抑えながら体を起こす。
「…俺……」
「制裁にあって、丸一日寝ていたんですよ、君」
「制裁……そうだ、千種…千種は大丈夫なのか!?」
先生の姿を捉えるとその言葉にハッとその時の事を思い出した。尋常じゃないくらい怯えた千種を脳裏に浮かべて血の気が引くのを感じながら、先生に詰めるように問掛ける。
必死な表情の俺を見ながらもにこにこと微笑んだままの武井先生は隣のベッドを指差した。
俺はベッドから身を乗り出して横のカーテンを引く。
「っ…千種…」
そこには、余程泣いたせいか目元を赤く腫らせた千種が安らかな表情で寝息を立てていた。
ホ、と安堵の息を吐くとベッドから降りて少し大きい上履きを履いて千種に歩み寄る。
良かった…
床に膝を着いて千種が寝転がるベッドに腕を置いて、そのふわふわな髪を撫でた。
「…本当に、いろんな表情を出すようになりましたね…隼人くん」
「え?」
呟くように告げられた言葉に、俺は理解が出来なくて武井先生を振り返る。
懐かしそうな笑みを浮かべる先生は、眼鏡を中指で押し上げてから首を傾けた。
「覚えていませんか、冷笑の青龍」
“冷笑の青龍”
それはみっちゃんが総長をしていた時の、幹部の名前。
不意に数年前の記憶が鮮明に蘇り、俺の知る先代の青龍が武井先生の姿と重なった。
俺はゆっくりと目を見開いてガタン、と音を立てながら勢い良く立ち上がる。
「ぇ、嘘…青龍…?」
「大きくなりましたね、疾風くん?」
「えぇぇえええっ!?」
疾風くんと呼ぶ声は以前より微か低いものの、俺の記憶と一致していて、驚愕の声を挙げる俺。
煩いですよ、と先生に咎められて口を片手で抑えた。
この学園、不良グループ集まりすぎだろ!
なんて突っ込みは誰にも届かず、武井先生が内線で呼んだ夜神先生が来るまで、俺は茫然と突ったっていた。