アイアム平凡ッ!
□第一話
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あんなに騒がしかったクラスが一気に静まりかえる。大ちゃんも、笑顔のまま固まった。
だって、そこに最恐と有名な八雲さんがいるんですもん。
「た、巧己、お前何かやったのかよ?」
「ややややってないよ。接点ないし…」
彼を凝視しながら、冷や汗がどっと出る。
「オイ」
「は、ハイィィィィ!」
「お前、ついてこい。」
な、なんで、俺をご指名!?
助けてぇぇえええ…!
──そして屋上に向かわされ、壁に追いやられたと思ったら、冒頭のセリフを言われた訳で。
「おおお俺、男ですよ?」
「知ってる」
「やや、や、八雲さんも男です」
「当たり前だ」
「…れ、恋愛の方で?」
「そうだ」
ええ…!?何、当たり前のように「そうだ」とか、言っちゃってんの!?
ビビりな俺は、汗だくだくだ。ちなみに反対から読んでも、だくだくだ。
「……返事」
「え…」
「返事、」
「はいっ!」
怖い顔で、低く告げられて…気迫負けして、思わず言っちゃった。
見上げると、見たこともない満面の笑みの八雲さん。もともと美形だから、かっこいいよなぁ…。
「…お前今から俺の恋人な」
「へ?……ンッ」
柔い声色で告げた後、チュ、と俺の口に軽くキスして、八雲さんは去っていった。
そっと、唇に指を這わす。
「うそ。…恋人?キスされた?男に?」
俺はその場にへたりこみ、顔を真っ青にした。
俺、今のファーストだったのに、男に奪われた。てか、
「…嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!?」
俺の叫びが、学校中に響いた。
「へぇ、あの彰が…面白くなりそうだね♪」
俺は、余りのショックに屋上に俺たち以外に人がいたことに、気付かなかった。