アイアム平凡ッ!

□第一話
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──…放課後


「ハァ…」

「巧己ぃ…溜め息が鬱陶しいよ。幸せ逃げるよー?」

「幸せなんか、八雲さんに会った時点で逃げちゃってるよ…しかも、一生分ね…」

「た、巧己…」

あっという間に放課後。
誰もいない教室には、死んだ顔で机に突っ伏す俺と、前の席のイスに腰掛けて俺を慰める大ちゃん。

あの後、何もなく過ごしていったのに(死んでたケド)、昼休みに八雲さんが教室にやって来て、「放課後、待ってろ」の一言。
怖くて、コクコクと頷くと“ポンッ”と俺の頭を軽く撫でて、教室を出ていった。

「はぁあぁぁぁ…」

そんなワケで、大ちゃんを道連れに八雲さんを待っている次第です…。
凄く怖いし、大ちゃんも凄く怯えてるみたいだけど、俺の為か普通にしてくれてる。

「どうしよ──ぅわっ!?」

「こっちまで、ドヨドヨ移るんだけど」

「知らねぇよっ!つか、離せぇええ!」

「やぁだ♪」

何故か大ちゃんに羽交い締めにされてる俺。
一応、俺は平均的な身長だけど、大ちゃんは俺より十センチくらい高い。
だから、足がちょっとヤバイ。

く、苦しいッ…!

「ちょっ…マジ離せって!」

「ジメジメしてる内はダメ」

「わ、悪かったってッ!」

首に絡まれている腕を掴み、退かそうと努力するが、非力な俺には大ちゃんに敵わない。

なんとか離れようと、バタバタ暴れていたとき。


ガラッ


「ぁっ…」

「ッ…」

「…!」

教室に入ってきたのは、俺のジメジメの元凶“八雲さん”。

教室にいる俺たち三人が、そのままの体勢で固まった。

どどどどうしようッ!八雲さんからの殺気が…!怖い怖い!

「……」

「………」

「…………」

沈黙が続くなか、俺の脳内では某お笑い芸人がネタをやっていた。

ヤバババイ♪ヤバババイ♪ヤバババイヤイヤイ聞いて?♪
とっても恐い、八雲さん♪そのお方の殺気がすご「おい」

「はいぃぃぃぃっ!!」

現実逃避という(今ではもう古い)ネタ披露中の突然の低い声。あまりの怖さに腰抜けそうデス…。




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