アイアム平凡ッ!
□第二話
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──…放課後
「巧己ぃ、一緒に帰ろうっ」
「ぅおっ」
あれからなんとか立ち直った大ちゃんが授業終りの合図と共に抱きついてきた。
突然の背後からの重みに、俺はまたも机に顔面強打しそうになった訳で。
あぶねぇぇ…!
小さく安堵の息を吐いてから大ちゃんを振り返る。
「悪ぃ、今日も八雲さんと帰るんだよ」
「えぇ!」
ガン、とショックを受けながらも後退る大ちゃんに空笑いするしかない。
でも八雲さんは、意外と照れ屋で可愛いんだぞーとか言い振らしてしまいたい。……やったら殺されるから言わないけど。
眼力で瞬殺されるのを想像して背筋が凍った。
「……巧己」
不意に教室に低い声が静かに響いて、大ちゃん含むクラスメイト全員が硬直する。
「っや、八雲さん…!ぃいい、今行きます!」
本人を目の前にしたら俺も恐怖に顔を引きつらせるしかない。
さっきの八雲さんは幻覚だったのかと思うほど、普段は怖すぎるんだもの。
慌てて鞄に教科書を詰めれば、ビクビク震えている大ちゃんに別れを告げて八雲さんに駆け寄った。
「お兄ちゃんっ」
またも俺たち二人の中で沈黙が続いたまま下駄箱へ向かうと、幼い声が聞こえて腹に軽い衝撃があった。
朝約束していたことを思い出して、その柔らかな髪を撫でてやりながらふと微笑む。
「巧真、いいコに待ってたか?」
「うんっ、あのお姉ちゃんとお話して待ってたの」
ふわりと微笑みながら巧真が女子生徒を指差す。そちらに顔を向ければ俺のクラスメイトの優しい笑みを浮かべる茂森 明日香(シゲモリ アスカ)さんがいた。
彼女は俺たちのマドンナ的存在のコで、女子たちの憧れである。
うわぁ、超絶美人が平凡な俺をちょびっと見たよ!
「倉本くんの弟さんだったんだ?可愛いね」
「ぁ、うん…面倒見ててくれてありがとう」
「いいよ、私も友達待ってたから」
歩み寄りながら俺に問掛ける茂森さんに、ほぅ、と溜め息が出る。もう笑顔が可愛すぎるんだ、彼女は。
思わず見つめていれば、不意に後ろからグイ、と腕を引き寄せられる。奇声をあげながら後ろに倒れれば、八雲さんに片腕で抱き寄せられた。
な、なんか後ろから絶対零度の視線が…!
「あら、八雲くん。今日も一緒なんだね?」