アイアム平凡ッ!
□第二話
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茂森さんがふわりと柔らかい笑みを浮かべると、ぎゅう、と抱き締められる腕に力が込められる。そしてまた、前からも抱き締められてしまった。
え、と下を見れば膨れた巧真が俺の背後を軽く睨んでいる。
「え、え…何、どしたの!?」
「倉本くん、モテモテだね」
「ぇえっ?」
状況が上手く理解できずに頭上にはてなマークを浮かべていれば、友達が来たのか茂森さんはそちらへ駆け寄っていく。
「また明日ね、倉本くん、八雲くん。巧真くんもバイバイ」
「お姉ちゃん、ばいばーいっ」
「ま、また明日ー…」
「……」
可愛い笑みを浮かべて、俺達に軽く手を振ってから友達と帰っていく茂森さん。
内心、この状況で行ってほしくなかった。この意味不明な状況で。
下校する生徒達の痛い視線に耐えられなくなった俺は、覚悟を決めて息を呑む。
「ぁぁあああの…っ」
「…あ?」
「て、手を離してくれると…嬉しい、です…」
どもり過ぎだ俺!
とか思いつつ、尻すぼみになりながら言うと意外とすんなり解放された。
前から抱きついてくる腕の方は離れないが。
「た、巧真も、ね?」
「…うんっ」
イイコだから、と頭を撫でてやれば天使の笑顔を見せて離れる巧真。
あぁもう可愛い、何この天使!
でれーと頬が緩んでいるのも気付かずに靴を出すとそちらに履き替える。
八雲さんはいつの間に履き替えていたのか、俺の手を握ってスタスタと歩き出した。
突然手を引かれたことに目を見開いて八雲さんを見上げると、微かに赤く染まる耳が見えた。
…やっぱ可愛いなぁ…
照れ屋だという意外な一面に小さく微笑む。すると反対の左手も小さな手に包まれて、巧真に視線を落とした。
「僕も手、つないで良いよね?お兄ちゃん」
「うん、もちろん」
微笑みながら頷いてやれば、嬉しそうにえへへ、と笑む巧真。
天使のように可愛い巧真と意外に照れ屋で可愛い八雲さん。
ある意味、両手に花だよなぁと思いながら学校を後にした。