捧&宝物

□オセロ
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「あー…イテテ」

「ししっ、累ダサ」

「うっせぇ」

目の前で、血に濡れた黒い塊が、長い前髪の向こうから俺を睨んできた。

いつもなら人気のない廃墟。
今は、俺と累の他に、いくつもの屍が散らばっている。
…正確には半殺しだけど。

「あのヤロ、ナイフなんか持ってンじゃネェし」

「木刀にナイフじゃ、長さ的に敵わないのにね、馬鹿。まぁ避けきれなかった累もだけど」

「っ絃、黙ンねぇとコロすぞ」

ムス、と睨んでくる累に、俺は茶化すように笑った。

でもまぁ、俺も血で汚れてるけど。

真っ白だった筈のパーカーやキャップに、所々返り血が付いていて、俺も眉を寄せる。

「疾風さんに何か言われっかも」

「……」

フードを深く被ったままキャップを脱いで、指先でくるくる回しながら呟くと、累は更に膨れた。

「しししっ、疾風さん、怒んだろうね。疾風さんのために、やったケド」

「…こいつらが疾風さんのこと、悪く言いやがったからだろ。俺、悪くねェよ」

そう、始まりはコイツらが放った一言。
それで、俺達はブチ切れたわけで。

俺も累も、尊敬する疾風さんを悪く言われるのは許せない。

まぁ、それで本人が喜ぶかは、微妙なトコ。

「とりあえず、疾風さんトコ行こー?累も、マスターに手当てしてもらわなきゃだし」

「…ん、」

血の滲む左肩を抑えながら、累は歩き出して、俺も隣を歩む。




「お前ら、また怪我しやがって!ったく、見た目オセロのくせに、似すぎだっ」

バーに向かうと血濡れの俺たちを見た疾風さんは、綺麗な顔を歪ませて怒鳴った。

いつもの展開に可笑しそうに笑いながら、俺は大人しくマスターに手当てされる累の隣に座った。

「ししっ、オセロだって、俺ら」

「っテ、…お前なんかとコンビなりたくねェ」

「しししっ」




真っ黒な累と真っ白な俺。
オセロなら裏表な筈なのに、似すぎだなんて。
なんて矛盾。


累はどう思ってるか分かんないから、
ちょっと嬉しいなんて、
言ってやらない。



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