捧&宝物
□可愛い人!
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「りゅ、龍黒っ?」
ごめんね、新名。教えるわけにはいかないんだよね。
純粋で優しくて可愛い恋人に嘘をつくのは、少しばかり心が痛むけれど、仕方ない。
「羽根でくすぐってるだけだよ、くすぐったい?」
擽るように羽根を緩く動かせば、素っ頓狂な声があがる。
そんな声をあげてしまったのが恥ずかしいのか、可愛い恋人は耳や目元を赤らめながら制止の声をあげる。
けれど、ダメと笑顔で言い腰を滑る羽根に力をこめた。
それと同時に鈍痛が俺を襲うけど、我慢。
笑みを浮かべたまま羽根を暫く動かして離すと、何やら視線を感じて。
勿論、そんな視線を向けているであろう人物は可愛い恋人だけなのだが。
視線を向けると、戸惑い混じりの不思議そうに見つめていた。
きっと、自分のした行為と己から無くなった鈍痛に疑問を抱いているのだろう。
否、疑問じゃなくて俺が何かをしたという疑いの眼差しだ。
似たようなことをしたことが数回あったから、バレる気がする。
出来れば、バレたくないんだけど。
襲う鈍痛と暫しの沈黙に堪えていれば、可愛い恋人が口を開いた。
「オマエ、また俺の治癒しただろ」
呆れたような眼差しに、若干怒った様子の瞳。
不安が一気に俺を襲って、情けなく俺は狼狽えながら可愛い恋人を見つめた。
「だって新名が腰痛そうにしてるの、嫌だったから…っ」
俺の理性が毎回切れかけるせいか、いつも行為は激しくなってしまうらしく、新名は腰を痛そうに擦っている。
それが申し訳なく感じて、堪らなく嫌で、謝罪の代わりに治癒をした。
治癒するだけなら、優しい新名はきっと怒らないのだ。
問題は悪魔である俺が治癒をしたことにより、治癒された側の者が持っていた痛みの数倍、俺が痛むことだった。
本来、人間や天使を治癒していいのは天使だけ。
悪魔は攻撃に長けている代わりに、人間や天使は治癒してはいけないと、まるで罰則のように治癒した悪魔に痛みが襲うのだ。
逆に、天使は悪魔より攻撃力がなく、治癒力が高いと言えど、悪魔を治癒するのはご法度だ。
悪魔同士や天使同士、または天使が人間に治癒するなら許されるのだが…本当、酷い区別だと思う。
遥か昔、種族同士が争いあってたからというバカバカしい理由で、こうして大切な恋人を守る為に罰を喰らうなんて、…酷い話だ。
眉を下げながら新名を見つめれば、言葉を詰まらせるも、ボソボソと言ってくれた。