捧&宝物

□お正月編(フリー小説)
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後ものの数十分で、長いようで短かった今年が終わる、時間。
暖房の効いたリビングでは、オードブルに飾られる食卓を、二人の少年が囲っていた。

二人の目に映る液晶画面では、新年を迎えることを祝うように、たくさんの人が賑わっている。

そんな画面越しの人物を横目に、つり目の漆黒の瞳をもつ少年は、口を開いた。

「今年も、後少しで終わるな」

遠くを見るような、感情の薄れた声を聞き、大きな漆黒の瞳をもつ少年も、同じ思いなのだろう、小さく頷いた。

まるで、実感がないのだ。

数日前から、正月に向けてのお節やポチ袋が売られ、世間一帯では完全にお正月モードだというのに、あまりにも時が過ぎるのが目まぐるしく感じて。
気づいたら、後ものの数分で新年が迎えられようとしている。

「でも、…楽しかったからそう思うんじゃないのかな?」

楽しい時間は早く過ぎるように感じるでしょ?
小さな笑みを浮かべながら可愛らしく、小首を傾げる少年の言葉に、つり目の漆黒の瞳を瞬かせるも、優しく細めた。

「なら、…オマエの、おかげだな」

オマエと出会ってから、色々あったりもしたが、楽しい日々が増えたように思う。

熱が耳に集まるのを感じ、顔を逸らすと、今度は大きな漆黒の瞳が瞬いた。

「龍二…」

顔を背ける少年の名を呼ぶ声は、ひどく甘くて優しい。
顔をこちら側に向けさせようと指先を伸ばした瞬間、画面越しにいる人達が、新年までのカウントダウンを始めた。

静かにそれを聞き、時計の短針と長針が12に重なった瞬間。

背ける顔をこちらへ向かせて、まるで重なりあう時計の針のように、唇を重ね合わせて。

つり目の漆黒の瞳が見開かれるのを、満足そうに見つめると、ゆっくりと唇を離した。

「龍二大好きっ!今年も、よろしくねっ」

新年を告げる除夜の鐘が遠く聞こえるのを感じながら、目を未だに見開いてる少年に微笑んで、照れ屋な恋人を抱き締める。

画面越しにいる人達のざわめきすら遠くに感じてしまう程、腕の中にいる恋人が、愛しくて。

まるでわんこのように、ない尻尾を振りながら、大きな漆黒の瞳を輝かせる。

そんなわんこのような少年を、つり目の漆黒を優しく細めながら見つめ、口を開いた。

「あぁ、…よろしくな。夏生―…」

優しく細められる瞳にそっと口付けて、更に赤らむ頬に笑みを浮かべた。

―来年も再来年も、ずっとずっと、大好きな貴方の傍にいられますように―。

祈るようにもう一度口付けを施し、遠退いていく除夜の鐘を片隅に置きながら、そっとテレビを消して。

静まる部屋の中、二人は将来を誓うかのように、もう一度口付けを交わし合うのだった―。

―Fin―



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