捧&宝物

□林檎飴、キスの甘さ
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右手に兄貴に買って貰った林檎飴と左手に柔らかな翔太の手を握り、騒がしい人混みの中を二人で歩む。
…そう、二人で。
兄貴は迷子になってしまったのだ。俺たちじゃなくて、兄貴が。

いつもなら兄貴の手を握っているから、はぐれることは無いのだけれど。今日は翔太優先だったから。

「…お兄ちゃんなら多分大丈夫だし、僕たちだけで少し遊んじゃお?」

ドジで可愛い兄貴を心配する反面、翔太と二人になれて、…ちょっと嬉しかったりで。
ダメかな、と思いつつ翔太に問い掛けてみる。
翔太は一度目を瞬いてから笑みを深めて頷いてくれた。

「じゃあ少し僕らだけで遊ぼっ」

その笑みに釣られて俺も嬉しくて自然に笑みを溢し、花火を見に行こうと翔太の手を引く。

──…兄貴、少しだけ、許してね?






ドン、と夜空に綺麗な花が散るのを、翔太と二人で見上げる。
いつもなら兄貴と一緒にいる花火がよく見える高台の神社の石段に俺たちは腰を下ろしていた。

「わぁ…!」

「凄い綺麗だね…!」

色々な色と形が暗い空を飾って、素直に感動する。
林檎飴に舌を這わせるとその甘味も合わさって、頬が緩んでしまう。

ふと隣で、翔太が小さく笑ったのが分かって、何かとそちらを見やると舌を軽く出してきた。

「僕にも一口ちょーだいっ」

首を傾げたのも束の間、林檎飴が欲しいのかと分かれば、うんっ、と頷いて差し出そうとした…のだけれど。

「んッ…」


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