捧&宝物
□林檎飴、キスの甘さ
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唇に押し付けられた柔らかい感触。
それが翔太の唇だと気付いたのは、唇を舌で舐められた瞬間だった。
「ん、…甘いね?」
「ッ…!」
翔太の顔が離れて、柔く微笑まれると同時に、俺は一気に顔を熱くさせた。
翔太を見つめたまま口元を抑えて身を固くする。
──…今、舐めた…?!
「…巧真、可愛い」
ふふ、と小さく笑って強く抱き締めてくる翔太。
人がいるのに、恥ずかしい、見られたら、と頭の中がグルグルとして、とりあえず真っ赤であろう顔を隠そうと翔太の肩に額を押し付ける。
「今の可愛いんだけどー…」
「ちゅーって…!」
近くにいたお姉さん達の会話が小さく聞こえて、花火の音の中に消えていく。
その内容に更に顔を上げたくなくなって、ぎゅうと翔太に片腕で抱き付いた。
「──…っいた!」
その状態のまま間もない内、不意に聞こえた兄貴の声に、俺は慌てて体を離す。
「っ良かったー…どこ行っちゃったのかと…巧真?顔、少し赤くない?」
安堵の息を吐く兄貴の問いに俺は林檎飴で顔を隠すようにして俯いた。隣から小さく笑う声がして髪を撫でられる。
「巧己お兄ちゃん、きっと花火の光のせいだよーっ」
翔太の答えに兄貴はそうかと簡単に納得して、焼きそば一緒に食べながら見よう、と笑みを浮かべて翔太の隣に腰掛けた。
「続きは、また今度、だね?」
兄貴が花火に夢中になっているのを横目に、そう耳元で囁き妖しく微笑んだ翔太に再び唇を塞がれる。
──…林檎飴と同じくらい、甘い味がした。