捧&宝物

□I With...
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賽銭箱に運よくあった5円玉を投げ入れ、鈴を鳴らしてから願いを胸の内に吐き出した、後。

バカに何をお願いしたの?と興味津々ながら尋ねられたが、羞恥とちょっとした仕返しとばかりに黙秘した。

拗ねるバカにおみくじすんぞ、と笑いながら声をかけた矢先、だ。

「すみません、少し取材させてもらってもいいですか?」

目を瞬かせるバカと、訝しむように眉を寄せる俺に、こういう者なのですがと言いながら名刺を渡される。
CMでは何回かは見かけたが、全く興味のない雑誌会社に俺は堪らず断ろうとした、が。

「初詣特集をやっていまして、美男美女カップルを捜していたとこなんです!写真一枚でもいいので、よかったら…!」

今、なんっつった?

美男はわかる。どうせ俺の隣で何故か悪戯が思いついた眼差しをしている、コイツのことだろ?
美女?…女なんざいない、俺はまごうことなき男だ。
まあ運よく、俺を見てオカマだ!という奴は今んとこ見かけていないが。

どちらにせよ意味がわかんない、写真とかを撮るのは元々恥ずかしくて苦手な上、それも女装したこの姿を保存?
挙げ句の果てには、それが有名ではないにしろ雑誌に載る?

…ふざけんな。

俺は男だ、と啖呵ついでに、このカメラマンとの縁を根元から切ろうとした瞬間だ。

「いいですよ?」

まさかの発言と展開に固まる俺に、奴は悪戯げに笑ってから、目を輝かせて頭を下げるカメラマンに尋ねた。

「インタビューとかもある感じですか?」

「はい!あ、でもよろしければで…!」

「だってさ」

どうする?と尋ねられるが、言葉は控えめながらも期待に目を輝かせながら、マイクを今にも向けそうなリポーターを見てしまってた暁には。

「…フン、好きにしろ。ただ、オマエが答えろよ」

腹を括るか、と小さく笑んでから小声で告げた後、目を瞬かせるも何故か「流石俺の飛鳥。任せて?」と楽しげに…愛しげに、笑まれる。

その笑みとこれからのことに羞恥に赤くなった顔を逸らしながら、既に取材に何故か楽しげに答えているバカを、盗み見た。

恋人です、と堂々と周りの奴等含めて告げられたことが嬉しかったなんて、…死んでも言わない。
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