捧&宝物
□オリオンをなぞる唇
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あれから数分後、ようやく目的の駅に着き、早速若者ばかりが集まるゲーセンへと向かった。
休日の日中な為、人がゴミのように溢れ返っているが、仕方ない。
はぐれたら困ると、指輪だらけの手を掴み、無理矢理ポケットに突っ込ませれば、またも真っ赤な顔で睨み付けられた。
引き抜かれそうになる手を強く絡め、ズンズンと人垣を分けて歩めば、諦めたのかまたも耳を赤らめながら仏頂面をし、俺の後に着く。
道中、やたらギャルギャルとした女子が「カッコいい」だの声をあげたり、どこぞの男が千夏を見て「可愛い」だの言ったり、オカマらしき奴が俺を見て「いやーん抱かれたい!寧ろ、…抱きたいかも」なんざ言っていたのは聞かなかったことにする、特に最後。
ゲーセンに着けば、どうしても負けず嫌いが発動するからか、千夏の方からレーシング系でバツゲームつきの勝負を挑んできた。
元々バツゲームという名の条件つきで持ち掛けようとした為、こっちとしては都合がいい。
「で、なんなんだよ?」
「…負けたら、一回だけネコやれ」
まさか、ヤメルなんて言わないよなぁ?
挑発的に細められた漆黒と、弧を描いた唇が俺を見上げる。
上等、誰が負けるか。
「…フン、じゃあオマエが負けたら、そうだな…快楽責めで焦らしてよがらせてやるよ。」
「いいぜ?絶対ェ負けねぇ!」
自信があるからか、ニヤリと楽しげに笑みながら告げる千夏に、俺は喉を鳴らして笑む。
バカだな、オマエ。
レーシング系の機械の画面に書かれる最高記録の隣に、俺の名前があることに気づかないなんて。
なあ千夏。
―いい加減諦めろよ、俺のが一枚上手なんだから。なァ?
悔しがる千夏に対して上機嫌な俺は、服屋に入った途端に目を輝かせ、パンク系の服を手に取る千夏に、小さく笑った。
こう、単純なとこも可愛い。
そんなこと言ったら、即座に殴られるだろうがな。
服を手にしながら試着室に向かう千夏の後に、こっそりと着いていく。
そして無理矢理試着室に入った挙げ句、セクハラをして、本日2度目の腹パンを喰らったのは、言うまでもない。