捧&宝物
□背中合わせ
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ザァァァ…
「雨、止まねぇかな…」
今日は昼頃から雨が降っていて。憂鬱だ、なんて授業中外を見ながら溜め息を吐くのは平凡代表、倉本巧己です。
雨は嫌いだ…。
みゅうぅ、なんて変な溜め息を吐いて机に伏せると号令がかかった。
「巧己〜っ!」
「ほわぁっ!?だ、大ちゃん、馬鹿、抱きつくなよっ!」
今日最後の授業が終わって先生が教室を出ていくのと同時に、大ちゃんが抱きついてきた。突然の背後からの重みに、頭を机にぶつけるとこだったがなんとかそれは逃れた。
「巧己、大丈夫か?雨降ってるけど…」
心配そうな表情をしながら大ちゃんが俺の顔を覗き込んでくる。俺はその本当の意味が分かって優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。大ちゃんは?今日部活?」
「んーん、委員会」
返ってきた答えにそっか、と返すと帰る身支度をする。そこでやっと大ちゃんが背中から離れた。
「なぁなぁなぁ」
「なになになに」
「巧己、今日先帰ってていいからな?遅くなりそうだし」
「そう?じゃあ今日は先に帰るな」
身支度を整えた後、大ちゃんとまた明日と挨拶を交して俺は教室を後にした。
昇降口に着いて靴を履き替えた所でピタッと足を止めた。
雨、傘……ぁぁぁああっ!
「傘持ってねぇぇぇぇぇええっ!」
か え れ な い っ !
だって朝のお天気姉さん、今日はサンサンとお日様が輝くでしょう、んふ♪って言ってたんだもん!
傘持ってくるわけねぇだろ!
そんなことを後悔しても傘が歩いてくる訳もなく。俺は溜め息を吐いて本降りの雨の中へと突入した。
バシャバシャと足元で音がする。その音が十回程聞こえた所で、俺は再び足を止めた。……いや、止められた。鞄を頭の上に乗せる腕を掴まれたから。
「ぇ…?」
「っ……巧己…」
後ろを振り返るとそこには八雲さんが。しかも、俺同様びしょ濡れ。
「ちょ、八雲さん!?か、かか、傘はっっ!?」
「……忘れた」
平然と言うと八雲さんは俺の腕を離して歩き出す。
………え、何。一緒に帰るの?びしょ濡れで?
「………風邪引いちゃうじゃないですかっ!走りますよっ!」
「ぅわ…っ」
グイ、と八雲さんの手を掴み、家に向かって走った。