捧&宝物
□背中合わせ
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「…お邪魔します…」
俺はびしょ濡れで髪や学ランからはポタポタと雫が落ちている姿のまま八雲さんに言った。
途中で、俺の家より八雲さんの家の方が近いということで、逆に引っ張られてきた。
八雲さんは俺にタオルを渡しながら別に、と言い髪を拭く。それに習って俺も髪を吹いた。
「………」
しかし、水も滴るイイ男とは良く言ったものだ。
今の八雲さんが正にそれで、とても色っぽく見える。
「……巧己?」
「っ……な、何でもないですっ!///」
ジッと見つめていると目があってしまい、慌てて視線を反らしながら言う。
い、色っぽいって……俺、変態…っ!
頬に微かに熱が集まるのを感じて、八雲さんに顔が見えないよう髪を拭く手を動かした。
「……巧己、こっちこい」
「ほわぃ…!」
ぐい、と手を引かれて慌てて靴を脱ぎ後に着いていく。着いた先は脱衣所で、風呂に入れってことか、と納得する俺。
「ぁ、俺は良いですから八雲さんお先「いや」へ?」
お先にどうぞ、と言い終わる前に八雲さんが首を横に振った。
きょとんと首を傾げると八雲さんがとんでもないことを言う。
「……一緒に入っちまうぞ」
「………………っはぁ!?」
いややや、待て待て待て。
一緒に!?俺と八雲さんが!?
「ぇえっ!いやいや、遠慮しますっ」
「……風邪引くだろうが」
「ひぃっ!」
……ごめんなさい、俺には断りきれませんでした。
眉間にいつもより深く皺を刻む八雲さんに"入るよな?"と問われれば思わず首を何度も縦に振る。
こんな威圧に押されて誰が断れますか…!断れる奴がいたら俺尊敬するよ!?
俺が了承したことに八雲さんはフ、と柔らかく微笑んだ。
「……先、入ってろ。タオルは適当に使っていい」
「はいぃぃ…っ!」
ビシッと何故か敬礼をしてしまった俺に八雲さんはおかしそうに笑いながら脱衣所を出ていった。
はあぁぁ、と安堵の息を吐いて俺は学ランを脱いでいく。眼鏡は仕方なく濡れた鞄の中に入れて。
「濡れてて気持悪…」
肌にくっつく服に眉を潜めながら脱ぐと洗濯機に放り込ませてもらった。
「……何でもう湯が張ってあるんだ…?」
浴室に入ると既にお湯が溜ってある湯船、立ち込める湯気。俺は一瞬首を傾げたが気付かぬ内に八雲さんがやってくれたんだろうと思い、とりあえずシャワーに手を掛ける。
「あったけ…」
冷たい雨とは違う暖かさに俺は目を閉じて頭から湯を被る。