俺についてこい!
□深夜の大暴走!
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そのまま神谷先輩にしがみついて高い視界を楽しんでいると、暫くして目の前に見覚えのある壁が立ちはだかった。
学園を閉鎖した空間にするための、分厚く高い塀。
…しかし、聞かされていた通り、完璧には閉鎖出来ていなかったようだ。
「ワオ。…マジで抜け穴、」
「だろ?俺もギリギリだ」
その塀の下の辺りに、縦横一メートルくらいの幅不恰好な穴が空いていた。
──…脱獄映画とかで出てきそうだな。
警戒するように暗い森の中を見渡した先輩は、漸く俺を地面へと下ろす。
視線の高さが変わったせいか、何となく違和感がある。
そんな不安定さに眉を潜めながらも俺は先にその抜け穴を潜った。屈めば何とか通れるくらいだ。
「うし、お前も早く…ぶは!」
「ぐ…、っ笑うな」
体勢を戻して抜け穴へ振り返ると、その巨体のせいで四つん這いになりながらそこを通る神谷先輩の姿。
つい噴き出してしまった為に抑えを掛ける余裕もなく爆笑した。
…何か笑える、とにかく笑える。
体を通して起き上がり、膝と手に付いた土を払い落とす姿にさえ何だか笑ってしまって、腹筋が死にそうになる。
何か知らねぇけど、ツボに入った…!
暫くヒーヒー言いながら笑ってたら、流石に怒られた。
そのまま僅かに続く笑いを必死に引っ込めながら、苛立ったように前を歩く先輩に着いていくと、今度は学園の外の森が目につく。
そういやこの山を徒歩で降りるのか?
と顔をしかめていると森の暗闇へ足を進める先輩。
「え、」
その先には木に隠れるようにブルーシートが掛けられた物体があって。
先輩がそのブルーシートを取り退ければ、そこには見慣れた赤いバイク。
「…お前、ここからバーまでコレで来てたのか?」
「もちろん」
「…何時間掛かるんだよ…」
呆れたような疲れそうな何とも言えない微妙な感想より、通う時間のが気になる。
とにかく今から向かうんだから計れ、との一言で、俺はバイクの後ろに跨がりながら携帯の時刻を確認した。