俺についてこい!
□深夜の大暴走!
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『El alivio』
そう書かれた綺麗な外装の店の前で、俺と先輩は歩みを止める。
みっちゃんが総長をやっている時からNatuRalが使わせてもらっているバーだ。
CLOSEの札が下がるドアへと足を進め、一度隣の神谷先輩──…いや、朱雀へ視線を向けてからそのドアを開いた。
「…あ゛?今は俺達が使ってるんだけど」
「閉店って看板見えなかったか?」
落ち着いた店の雰囲気とは逆に、店内には賑やかに騒ぐ不良達が集まっていた。
ドア付近にいた数人が俺に気付いて睨みを効かせてきたが、後から入ってきた朱雀を見れば慌てて頭を下げる。
それに気付いた不良たちが皆此方へ視線を向ける中、その内の一人が此方へと向かってきた。
「あれー?誰?パパの隠し子?ししっ」
「馬鹿言うな」
目深に帽子と真っ白なパーカーのフードを被り、顔の上半分が全く隠れていて特徴的な笑い方をする少年。
彼が幹部の一人『玄武』だ。
玄武がからかうように告げた事をキッパリと返せば、四神は?と朱雀が問い掛ける。しかし首を横に振る玄武。
今日は来ていないようだ。
「…タイミング悪ぃな」
「え、」
「!疾風さん!」
何で今日に限って皆いねぇんだ、と思わず呟いてしまうと、瞬間動きを止める玄武。
次いで、不良達の中から黒い塊が飛び出してきた。
「疾風さん、今までどこ行ってたのっ?」
「っ累…ちょっと、な」
玄武と似たような服装だが真逆に、真っ黒なパーカーのフードを目深に被り、天パの黒髪にこれまた顔の上半分が隠されている少年は、嬉しそうに俺に駆け寄ってきた。
少年──…累は、幹部ではないものの、それに近い存在で俺のお気に入り。
犬みたいで、可愛いというか。
累に和んでいると、朱雀以外が驚愕の声をあげた。
「「ええぇぇえええ!!?」」