ショートショート

□ときめきブルー!
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おやまあ、というのは同級生の口癖(?)だ。
ぽわんとしているようで男前、不思議な不思議な電波くんの台詞を思わず奪ってしまう程の現象が俺の目の前には広がっていた。



ときめきブルー!



「何、してるんですか。生物委員会委員長代理、五年ろ組の竹谷八左ヱ門先輩」
「…説明と紹介有難う。ついでに助けてくれるともっと有り難いんだけどな」

眉を八の字にして情けなく笑うのは俺が所属している生物委員会(同じなので以下略)の八先輩だ。
俺よりも幾分か背が高い筈の先輩を見下ろして、俺も笑った。

「いやーまさか五年生ともあろう先輩がこんな無様にうちの綾部の蛸壷、ターコちゃん7号に嵌まるとはなかなか珍しいこともあるもんですねぇ。大丈夫ですか?お怪我はされてないですか?泥塗れになられてお可哀相に」
「…お前な、台詞と顔があってねーんだよ!嬉しそうにニヤニヤすんな!」
「おやまあ、先輩ったら可愛い後輩が心配してるっていうのに嬉しくないんですか?」
「ほんとに心配してたらな!」

ぎゃいぎゃい騒ぐ先輩の声が遠い。
いや、よくもまあ此処まで深い穴を掘れたもんだ。感心感心。
覗き込んで、不意に疑問が沸いてきた。

「…なんで出て来ないんですか?確かに深い穴ですけど下級生ならいざ知らず上級生、ましてや五年生ともなれば出れるでしょうに」

気になることはそのままには出来ない性分なので、そのまま聞いてみる。
すると先輩はまた困ったように笑った。少しだけ、照れたようにも。
そして、不思議な間が流れる。
…なんだこの間は。


「いや、な…」

珍しく快活な先輩が口籠った。
そして参ったと言わんばかりに泥の付いている手でがしがしと頭を掻く。
(お世辞にも綺麗とはいえない髪にも泥が、あ、やっぱり付いた。あーあ、タカ丸さん怒りそう)
そして更にその泥だらけの手で緩んでる口元を抑える。
まるで、照れているのを隠すように。

「出ようとは思ったんだけどさ、近くにお前の気配がしたもんだから」
「俺が居たから、なんです?馬鹿にして欲しかったとか?」
「阿呆、…いや強ち間違いじゃねーか」
「先輩?」

「このまんま待ってたら、お前に構って貰えるんじゃないかと思ったんだ」


そう言ってはにかんだ八先輩に不覚にも胸がきゅんとした。



ときめきブルー!



(隠しきれてない赤い頬が)
(可愛いだなんて、認めない!)

(八先輩の馬鹿ぁ!!)






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ひー!むず痒い!
竹谷は照れても爽やかに笑ってそうだなーという妄想でした!


20110504

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