ショートショート

□ワンダーワンダー
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僕の憧れのヒーローは、年上の人には敬語を使える(変な、だけど)し素直に謝れる(多分)優しくてかっこいいヒーローだった。



ワンダーワンダー



「あ!」

見付けた。
目立つ服装に目立つ髪型。勿論雰囲気というか、彼の周りにあるオーラもあるのだろうけれどお目当ての彼はすぐに見付かった。
今日も相変わらず友人(確か、億泰さんと康一さんだったはずだ)の人達とわいわい言いながら登校してる。
僕の憧れ、ヒーローであるその人は学校でも有名な東方仗助さんだ。
僕より一つ上の彼は格好良い。情けない話なのだけれど、僕が彼を知ったきっかけは二つ上の人達に絡まれている時だった。高校生にもなって中学生からお金を取ろうとするだなんて人として最低だとは思うのだけれど、僕には抵抗する術がなく払うしか道は無かった。それを、通りすがりの仗助さんが助けてくれたのだ。(と、いうかまあ髪型を馬鹿にされた仗助さんがキレたのだけど)

あの時、僕は東方仗助さんに一目惚れをした。

きっと彼は覚えてなんてないだろうけど、それ以来僕の憧れは父親から彼へと代わったのだ。
勿論僕にも常識というものはある。男の僕が仗助さんを好きになることがマイノリティだと言うことは理解出来ている。
だから僕は仗助さんに声をかけられずにこうしてたまたま一緒になる登校途中の彼を見るしか出来ないのだ。
はふん、と溜息。
女々しいな、なんて思って俯いて歩くと急に誰かにぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさい」

この間みたいに絡まれたらやだな、と思いながら顔を上げた僕は思わず絶句した。ついでに鞄を落としてしまうほどのこの衝撃。
僕の目の前に居たのは、僕がぶつかったのは、ついさっきまで思い描いていた東方仗助さん、その人だった。(仗助さんの後ろには億泰さんと康一さんもいた)

「オメェよォ、こないだカツアゲされてたチビ助だよな?」
「え、あっ…は、はい?」

突然のことに驚いてしまって変な声が出た。
だって、仗助さんに話し掛けられるだなんて誰が想像できるだろう?
勿論、僕は想像出来てなんかない。
だから当然頭の中は真っ白。ぱかんと口を開けて茫然と立ち尽くす間抜けな僕がそこに居た。

「ん?なんか固まってるぞ?」
「おいおい、怖がらなくてもいいーって。別に取って喰おーってんじゃねぇんだからよォ」
「む、無理だと思うけどな…」

康一さんの言葉に思わず頷く僕だった。
だって、仗助さんに億泰さんの二人はすごーく威圧感がある。(二人とも僕より30cmは高いのではないだろうか)
しかし、しかしだ。
もしかしたら、これはチャンスなんじゃないだろうか?
実を言うと助けて貰った後、お礼を言えていない。それが僕としては心苦しかった。
…うん。頑張れ、僕!

「あ、あのっ!」
「あ、そういやなんで声掛けたか言ってなかったな」
「…へ?」

そりゃそうか。
自分のことでいっぱいいっぱいになってしまってたけど、仗助さんがいきなり声を掛けてくれたのには何か理由があるはずだ。
それを聞いてからでもお礼を言うのは遅くない。
開きかけていた口を閉じて僕は仗助さんの言葉を待った。

「大したことじゃねぇんだけどよ、あれ以来お前…俺のことずっと見てるよなぁ?もしかして、スタンド使いであん時の俺のスタンドが見えてた…なんてこたァねぇよな?」
「…スタンド?」

なんだそれ、というように(実際わからないし)首を傾げるとわからないならそれで良いと言われてしまった。

「…だったら、なんで俺のこと見てたんだ?」
「え、と…お礼、を言いたくて」
「お礼?」
「はい!この前は、助けて貰ったのに言えてなかったから…」
「ああ、いーって別に。結果的にお前を助ける形になっただけだしよォ」
「でも、助かったのは事実ですから。有難うございました、仗助さん」

へらりと笑って頭を下げると、照れたように「おう」とだけ言ってくれた。
なんだかそれが可愛くて、僕はますます仗助さんが好きになった。
「そういや、なんで俺の名前知ってるんだ?」

有り触れて当たり前過ぎるその質問の答えに僕はにっこりと笑った。
僕が仗助さんを知ってる理由だなんて、ひとつ。
それは至極簡単な答えだった。

「 仗助さんが好きだからです! 」

「え?」
「ええっ!?」
「な、なにィー!?」

ぴしりと固まる仗助さんたちに僕も思わず固まった。
ちょ、ちょっと待って!今僕はとんでもないことを口走ってしまった気がする…!
こ、これって…告白、なのか!?
そのことを意識し始めると段々と恥ずかしくなってきて、顔が熱い。多分、今の僕は顔を赤くしてしまってるに違いない。
こうなったら、僕が取る手段はただひとつ。

「あっ!逃げたっ!」
「じ、仗助くんっ!固まってる場合じゃないよ!」

僕は脱兎のようにその場から逃げ出した。
最後に見た仗助さんは、僕と同じように顔を赤くして固まったままだった。






(スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃…)
(僕はヒーローに恋をする)




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仗助好き過ぎる…!
かっこよくて美人なんだぜ!

20091016

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