短編2

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※死ネタ、両想いだけど暗い



円堂 守が過去を守って
めでたし、めでたし


物語ではハッピーエンドでも
現実は厳しく辛いもの




この世には
パラレルワールドなるものが
存在しているらしい


例えば今、この世界では
私が考え事をしていても
パラレルワールドでは
寝ているかもしれない
サッカーしているかもしれない


円堂 守が守った未来が
今私の生きる80年後に
ならなくなっただけで
この世界は何ら
変わりはないのだ


ガシャリ、


重々しい鎖の音が
空気を震わせた


私は囚われていない
なら、誰が?


「くっ、」


『バダップ・スリード、』


彼は少年兵の中でも
極めて優秀だった


彼は円堂 守の討伐を
命じられたのだが
負けてしまった


軍は敗者を許さない
故にこうして彼は
牢に入れられたのだ


「お前か、F00」


『そうよ、』


私はバダップと違うから
名前など与えられず
番号で呼ばれてた


『ギリギリの命なのに
死ぬって言うのに
貴方は絶望しないのね』


「サッカー、
教えてもらったからな」


『訓練の、でなくて?』


「あぁ、」


楽しかったって言った


バダップは
軍人になるべくして
生まれてきた


だから私みたいに攫われて
この施設で労働するのとは
明らかに異なっていた


彼は娯楽を知らない
私がここに来る前に
していた遊びも、歌も、
何一つ知らないのだ


純粋な軍人は
過去で穢れという
楽しさを知った


だから彼は処分されるのに
嬉しいなんて、


『バカね……』


「F00、
何故お前が泣くのだ」


『知らないわ、』


牢の隙間から手が伸びて
指先が私の涙を掬った


「円堂 守と俺は正反対だ
奴はサッカーを愛していた
楽しさを知っていた
俺の知らない事ばかり
持っていたんだ」


『うん、』


「眩しかった、」


以前のような
冷たい手ではなかった
血の通った温かい手だった


「死ぬことに絶望はしない
俺は俺の正義を貫き
死ぬことが出来るからだ」


だけど、


ガシャリ、ガシャ、ガシャ


「出来るなら
お前をこの手で
抱きしめたかった」


鎖が、牢が邪魔をする


手を伸ばしても
触れるのは指


「何時もお前は、
無駄と知りながら
俺に“世界”を教えようと
してくれたな」


『うん、』


「邪魔だと思いながら
お前が来るのを
罰則を与える為と
言いながら待ってたんだ」


バダップはそれはもう、
穏やかな顔で
微笑んでみせた


「俺は、
お前を『言わないで』」


私も大泣きしながらも
無理矢理に口角を上げた


『聞いたら私、
ダメになってしまうわ』


円堂 守、
キミはズルいよ


私がバダップに
危険を冒してまで
教えたかったモノ、全て
サッカー一つで
気付かせたのだから


『バダップ、
私の生きる意味は
もうここには無くなるの』


「ああ、」


『だから、最期くらいは』




それから、それから


じめじめとした
暗い、暗い、牢獄で


美しい二つの死体が
互いを求めるような姿で
見つかりましたとさ



“最期くらいは
隣に居たいと
願っても良いでしょう?”





未来生存率00%






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