短編2

□ロマンス全否定
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帰りの電車に
揺られながら
流れていく景色を
何となく眺めていた


隣には俺よりも
小さな愛しい人、


彼女もまた
俺同様にしていた


何でもないような
日常の1コマだけど
それでも俺には十分すぎた




彼女が俺の袖を
控えめに引いた


『源田、』


“手を繋いで欲しい”
そんな彼女なりのサイン


俺はそっと手を握る


俺の大きな手より
遥かに小さな手から
伝わる熱


守りたいと想いが強くなる


横を見た時に
触れ合う視線


徐々に胸が高鳴る


何億と居る人の中で
彼女という一人の
女性に出会い、
恋に落ち、
想いが結ばれた事


彼女と居ることは決して
当たり前の事じゃない


だけど、当たり前のように
人々は過ごして
しまうのだろうか?


かといって伝奇的な
付き合いを望んでいる
訳でもない


それこそ俺達は
物語の王子でも姫でも
ないのだから



ふと肩に感じる
彼女の頭の重みに
口元が緩むのが解った


奇跡の様で、当たり前
日常の様で、非凡


恋というものは
酷く曖昧だが
これだけは絶対だ


彼女を好きだと
これからもこの日常を
共に生きたいという
強い気持ちは



ロマンス全否定



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