短編2

□好きの反対側
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※捏造南沢さん


『南沢先輩、』


昼休み、屋上にて
昼食を取り終わり
景色を見渡していた


決して媚びてないが
高い女独特の声がする


彼女は何時もここに来ては
オレに声を掛けていく


『好きです、』


「嫌い、」


『でも、先輩が好きです』


「オレは嫌い、」


そして懲りなく
この会話を繰り返した後に
彼女は笑って去っていく


「フン…、」


騒がしい奴、
嵐みたいだ


次の日も、また次の日も、
彼女はそうやって
オレの元へ来ていた…のに


「遅い、」


普段ならこの時間に
必ず来る彼女が来ない


イラついて、
そんなの格好良くなくて
前髪を乱暴に払う


「チッ、」


煩いし、学習能力ないし、
時間に正確じゃないなんて
美しくない


そんな奴、好きではない


『南沢先輩、』


やっと来たか、
そう思った瞬間
空気を震わせた
彼女の台詞に背が凍る


『嫌いです』


「オレも嫌いだ、」


酷く動揺した所為で
声が震えていた


目の前の彼女は
何時もと変わらぬ笑顔だが
言葉だけが大きく
異なっていたのだ


カタカタと震える足に
何時もは自信に満ちた
自分らしくないと
前髪を再び払う


「それで、
わざわざそんなこと
言うようなことか?」


冷静では居られなくて
声が何度も裏返りそうだ


『先輩は本当に
私が嫌いなんですね…』


少し寂しそうに
笑う彼女はこんなに
魅力的だっただろうか


『何時も、迷惑でしたね
でも嘘は言えません
本当に南沢先輩が
好きなんです』


オレはハッとする


人は失ってから
大切なモノに気付くらしい


だが、オレは少し早く
気付けた訳だ


「待て、」


―失ってはならない


立ち去ろうと
背を向けた彼女は
手を掴んでも
一向にこちらを見ない


肩が僅かに震えていて
声が漏れる―泣かせたのだ


ポケットからハンカチを取り出す


少しアイロン掛けが
とれてしまっていたが
これを渡す他、致し方ない


「こんな風に
お前を悲しませるオレを
まだ好きだと思えるか?」


『好きな気持ちを
簡単に変えられると、
思いますか?』


「いや、」


好きの反対側



好きでは無いという
気持ちの反対側が
必ずしも嫌いと限ろうか?


オレはただ、
認めたくなかっただけで
好きだった筈なのだ


少なくとも彼女が
ここに来ることを
拒んだ事は
一度として無い


後ろから、キツく
キツく彼女を抱きしめた


『南沢先輩、同情なら』


「同情なんかで
人を好くことなんか
出来るわけないだろう」


『先輩、』


「悪かったな、
オレもその、
お前をきちんと好きだ」


好きの反対側は
無興味であり、
嫌いという感情は
好きの現れなのだと思った




――――――――――
瞳が“リバースカード”な
南沢さんが好きだ
なんてったって
あの性格が堪らない

天馬との交代宣言に、
絶対傷付いていたに違いない

*


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