短編2

□女王様の
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朝、下駄箱に入っていた
綺麗な封筒


封を切り中を見れば
これまた可愛らしい便箋


丁寧な字で
用件が綴られていた


―放課後、
裏庭に来て欲しい


恐らく男の子の
字であろうそれに
私は少し見覚えがあった


二時間目の小テストで
確信したのだが
それは佐久間くんのもの


今だけは先生を恨む


丸付けは隣の生徒と
交換なのだ


佐久間くんが私に
告白だなんて
到底考えられず
果たし状なのだと解釈した


やはり私は
サッカー部や彼自身に
無意識に喧嘩を売っていた


戦時中に赤紙を貰った人は
こんな気持ちだったのかと
失礼な事を思い
私は溜め息をついた




我ながら頑張ったと思う


手紙を下駄箱に入れたから
後は本人が来てくれるか
どうかだけ


俺の心臓は破れそうだ


『佐久間くん、』


まさか本当に
来てくれるなんて
といえば語弊がある


断れない性格だと解って
彼女に手紙を出した


怯えるような表情に
俺はどうしていいか
解らない




彼は気付かない
元々の顔の造りもあり
悩めば悩むほど
怖い顔になっている事を



『私、何か…』


「あのさ、」


『え、はい!?』


「お前がペンギン好きだって
聞いたんだけど本当?」


水族館開館20周年の
ペンギン限定キーホルダーを
私が持つのは
生意気だったかな


『す、好きですけど』


「いや、そのあれだ」


『なんですか、』


馬鹿みたいに緊張してる


「招待チケットがあるんだ」


『それって、水族館の
普段立ち入り禁止区域に
案内して貰える代物じゃ』


「そうだ、お前は」


『う、』


「ペンギン好きなら
その一緒に行って
やらないこともない」


よく見たら
目の前の女王様は
頬をほんのり赤く染め
私を見ていた


『誘ってくれるの?』


相変わらず冷たい
鋭い視線だけど
可愛らしく見えてきた


「ああ、」


『私で良ければ、
よろしくお願いします』


「フン、」




後日、水族館で
目を輝かせながら
ペンギン談義をする二人が
目撃される


ちゃっかり佐久間は
次の約束を取り付け
更にその後、
源田に嬉しそうに
両想いになったと
報告したのである



(要するに、女王様は
不器用で照れ屋さん)


――――――――
佐久間はツンツンして
空回りしてれば
可愛いと思います

第二回企画
のんすとっぷ様に提出

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