長い夢

□プロローグ
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「No.2(ドゥーエ)!No.7(セッテ)!大丈夫か!応答しろ!」



暗い森に響く女の声をかき消すかのように、木々がざわめく。



「、、、チッ、追いつかれた!」


後ろに感じた殺気に、女は呟く。



「ししっ、逃がさねぇぜ?」


後方から聞こえる男の声とは逆方向の木に女は飛び移る。




男が投げて来る不思議な形状のナイフを間一髪でよけながら逃げて行く。





「あと、、、少しで、、、出れる、、、、ぐっ!」





足に負担がかかってしまったのか、バランスを崩し、叩き付けられるように落ち葉の上に落ちる。しかし、不幸中の幸いか、予期せぬ事だったために男は見失ったようだった。






「少し、、、、、休むか、、、」




足をひねってしまったのか、足を引きずりながら近くの木の根元まで移動する。






月に照らされたその姿は、まさに『影』。黒い髪を横で一つにまとめ、長袖の黒い服に膝上10センチほどのミニスカート。


その上に腰からのコートを着けているが、あちこちがボロボロになってしまっている。体も傷だらけで、呼吸も荒い。



木の幹にもたれかかり、しばしの休息に入ろうとした途端、サッと頭上の光が遮られる。





「(敵かっ、、、!)」





上を確認する間もなく、目の前に一人の男が降りて来た。女は臨戦態勢に入ろうとしたが、体が思うように動かない。どうすることもできずにまた座り込む。



すかさず、さっきとは違う男が首の脇数センチ程の所に鋭く尖った剣を刺す。


「侵入者っていうのはテメェかぁ?」男は言った。



「だったらどうする。殺るなら早く殺れ。」
怖いぐらいに冷静な声。



そんな声には動じず、男は剣を刺したまま座り込む。


「どうした。怖くなっ、、、」言葉が終わらないうちに、男は手を伸ばし、女の顎をくっと少し上げる。


そこで初めて二人の目が合った。 しかし、女は顔色一つ変えずに真っ直ぐ男の方を見つめていた。





「お前」男が口を開いた。



「綺麗な顔してんじゃねぇか」女の顎から男の手の感触が消える。



「俺は女を殺る趣味はないんでなぁ、少し眠ってて貰うぜぇ」



腹部に走る衝撃と共に、女の意識はそこで途絶えた。
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