(貞カヲアス)
「セカンド、それ何?」
学校を出てすぐのコンビニの前でフィフスと鉢合わせした。そういえばこいつ授業終わってから鈴原達と騒いでたっけ、なんて思いながら飲んでたジュースから口を離して答えてやった。
「新発売だとかいうジュース。あんたシンジ達は?何で1人なのよ」
「鈴原君が洞木さんとデートらしいから校門で別れた。本人はデートじゃないって言い張ってたけどね」
ヒカリも苦労するわね、と心で親友を哀れみながらもう一口。
…そこでフィフスの視線がジュースを追い掛けてる事に気付いた。
何その物凄い真剣な目。何よ、何が言いたいってのよ!
「それ、美味しい?」
「…別に普通。何?」
「ふーん」
私の質問には答えないでカバンを降ろしたかと思えばあろうことかそれを放り投げてきた。当たる寸前でジュースを持ってた手とは逆の方でキャッチする。さすが私。
「な、何すんのよ!零すとこだったじゃない!」
「ちょっとそれ持ってて」
そう言うのが早いか、フィフスは財布一つ持ってコンビニに入っていく。
相変わらずあいつのやる事は突拍子もなくて訳がわからない。
「ってゆーかこのカバン軽すぎ!何しに学校きてんのよあのバカは!」
絶対中身は空だと決めつけて覗けば案の定。持ってくる意味ないじゃんこんなの。
そんな風にごそごそやってたら会計を済ませたらしいフィフスがコンビニから出てきて、「何も入ってないよ」とか呑気に言ってきた。見りゃわかるわよ。
「って、そのジュース…」
「味が気になるんだよね、新製品って。……あー、普通って感じ」
買うまでのもんじゃないね、って付け加えたからその通りだと納得する。これを買うくらいなら好きな飲み物を買った方が得をした気分になるだろうし。
「あんた試して見たかっただけなら私に頼めば良かったじゃないの」
「セカンドに?…頼んでも僕にはくれないだろ?セカンドは」
けらけら笑って言われて、
ムカついた。
「何よそれ!人をケチみたいに言わないでよね、欲しけりゃやるわよ!!」
「別にいいよ、買っちゃったし」
思いっきりフィフスにジュースを押し付ければ面倒くさそうに言われた。ああムカつく。
「やるっつってんでしょ!」
苛立ち任せにフィフスからジュースを奪い取って私が買った方を持たせると、フィフスはぽかんと口を開けた。
「ねぇ、これってなんか意味あんの?」
中身同じじゃんか。
バカのくせに余りにも正しい事言うもんだから自棄になって「あるわよ!」と怒鳴ってやる。黙って受け取りゃいいのに!
「…まぁいいけど。返さないよ?」
「好きにしなさいよ、私はこっち飲むんだから」
ぷいっと顔を反らしてジュースを口に含む。ついでにカバンも押し付けた所でフィフスが「しかし僕って意識されてないね」と不満げに言うのが聞こえて、はぁ?と睨み付ければ肩を竦めて別に、と言われた。本当に訳のわかんない奴。
「何よ、意識って。どーゆー意味?」
「間接キスじゃん。それとこれ」
ちょんちょん、とジュースの先と口を指して言われた。
…………
……………
「どこで覚えてきたのよそんな事!バカのくせにそんなこと気にすんじゃない!!」
「うわ、びっくりした。何で怒ってんのさ?」
「怒ってない!帰る!!」
なんだかよくわかんないけど妙に恥ずかしくなって大声でそう言ってダッシュする。
間接キスが何よ、普通のキスだって挨拶みたいなもんじゃない!ああもう、あのバカが変な事言うから!!
「おーい、セカンドー!」
「何よ!!」
やけくそで振り返って叫べば、にやにや笑って「また明日」とか言われた。ジュースを飲みながら。
意識してないのはどっちだ!とムカついて、明日は朝一番に蹴り飛ばしてやろうと心に決める。
「生ぬるい、10発はぶん殴らないと気が済まない!!」
…
ちくしょう、あんな奴を意識しちゃったなんて最悪!
足が疲れてきた頃にジュースを持ったままなのに気付いた。捨ててやろうかと思って、それから考えを改める。
シンジにやろう。あいつもフィフスと間接キスすりゃいいのよ!
次の日学校に行ったら「惣流と渚がキスしてたらしい」とかいう噂が広まってて、私が後から登校してきたバカに必殺のコンボをお見舞いしたのは言うまでもない。
***
<ピンクローズの憂鬱>
「惣流と渚が間接キスとかって話してたぜ」→「え、マジ?キス?」→「コンビニの前でお別れのキス!?」
噂の広まる基本形。笑
(title:zinc)
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○年ぶりにログに収まることになりました…渚くん、アスカさん、お疲れさまでした(笑