文
□全俺が泣いた
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あの子の心が読めたなら、私は他の誰の心も読めなくていい。
「おねえちゃんおねえちゃん!」
「なぁに、こいし」
「私ね、おねえちゃんに絵を描いたんだよ!」
と、こいしが見せてくれた絵はとても上手いとは言えないけれど、暖かみがある絵だった。
だけど、私はすごく戸惑っていた。
この子はどんな言葉が欲しいのかしら。
誉めて欲しいの?
それともアドバイスが?
ああでも頭を撫でて欲しいのかも知れないわ。
「おねえちゃん?」
「え、あ」
「やっぱり上手く描けなかったよね。ごめんなさい、次は上手く描くね。」
そう行ってこいしは肩を落として、とぼとぼと廊下を歩いて行った。
ごめんなさい、こいし。
絵を描いてくれて、本当に嬉しかった。
それなのに、私は貴女に何て言葉を掛けていいか分からないの。
全俺が泣いた
絵の中の仲良く会話をする私達が、とても輝いていて、とても遠いものに見えた。
END