daigo

□訪れ
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ビル、ビル、人、人、車
プラス太陽

こんな暑苦しい街中を歩きたいと思ったのは何故だろう。
恋人に放置され、寂しさを紛らす為に外出してみたその行為が馬鹿だった。

涼しさを求め少し大きめの店に入っていく。
服でも見ようかと2階へ移動。
でもやっぱり後悔。

店内は秋を意識していて周りを見渡せばブーツに生地の厚い暖色の上着。

だからと言って隅の方の30%OFFと表示された夏服を買う気にもならなくて、小さく溜め息を吐くと足は自然とエスカレーターを降りようとしていた。

ノースリーブのワンピースにカンカン帽の私は居辛かったんだ。

「…だから季節の変わり目って嫌い」

また寂しさを見つけるだけだった。


もう家に帰ろうとまた暑苦しい街を歩き出す。
こんな事ならアイスティーでも飲んでこれば良かった。

ビル、ビル、人、人、車
プラス太陽

スーツ姿の人を見るとどうしても確認してしまう自分が嫌だ。
あの人はこんな忙しそうに歩く類でもないけど。
社会に束縛されるのが嫌いで自由に生きてるんだもの。
でも今回は自由すぎるでしょ。何週間連絡ないと思ってんの。

イライラする。

家の目の前まで来ると思わず目を疑ってしまった。
薄汚れたスーツに優しそうな笑顔。

会ったら殴ってやろうと思ってたのにその前に涙が溢れ出す。

「ごめん、石取りに洞窟行ったら迷っちゃった」

「…ばーか」

抱き付く私に少し早くなった日の入りが秋を知らせてくれる。

この時期がちょっとだけ素敵に思えた。


end

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