daigo

□神無月の桜
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日増しに秋も深まり、灯火親しむころとなりました。



春、ダイゴさんの婚約者が亡くなりました。

桜が咲いている中、葬儀は行われました。
私はダイゴさんが好きでした。
私は少しだけ心で喜んでしまいました。
私は最低でした。

そのうちに夏が来て、気がつけばもう10月です。

それなのに、秋風と一緒に桜の花びらを一枚見かけました。

その道を辿ってみると一本だけ、桜が咲いています。

「狂い咲きだね」

「ダイゴさん!」

後ろから声が聞こえたので振り返ってみると、そこには私の好きな人。

「僕の婚約者が死んだとき、」

心臓がドキリといったのが聞こえました。

「桜の花が咲いていた」

「…はい」

「でも、一本だけ咲いていなかったんだ」

「え、本当ですか…?」

「うん。それがこの木。彼女がね、やけに毎年この木を気に入っていたから今年咲いていなかったのを覚えてるんだ」


彼女さんが、死んでもまだダイゴさんを好きなんだってわかりました。
ダイゴさんもまだ忘れられないんだってわかりました。

こんなに辛い事は、ありません。



10月ももうすぐ終わりです。

桜が咲いています。
秋桜ではありません。

それでも

私の桜は散ったまま。
私だって咲きたいよ。


end

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