Snow White
□朝の散歩=冒険
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極限な人(了平)とも別れ、真っすぐな道を歩いていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた
「あれ?天草じゃねーか!」
「…山本君?」
その声の正体は、並中一の爽やか野球少年であり、同じクラスメートの山本武だった
スウェット姿であるため、さっきの極限な人(了平)みたく、ロードワークの最中だったんだろう
「山本君…ロードワーク?」
「ああ!こうでもしねぇと身体がなまっちまうからな!」
ニカッと爽やかに笑う山本に、瑠璃華もつられて笑う
…彼がなんで人気があるのかが、わかったような気がした
「天草こそ、何してんだ?」
「私は手紙を出しに……あ」
「?どうした?」
「…郵便局、どこにあるかわかんなかった」
普通、外国へ手紙を出す時は、郵便局に直接届けなければならない。それ以外の方法もあるにはあるが、手紙を出すことさえ経験がない瑠璃華は、より確実に手紙が届く方法を選んだのだ
だが、瑠璃華は郵便局がどこにあるか知らなかったし、恐らくまだ開館していないだろう
あまりにもたくさんの風景や発見に、瑠璃華は本来の目的を忘れていたのだ
「ポストじゃダメなのか?」
「外国への手紙なんだ。ポストはよくわかんないから出せないの。どうしよう、手紙出せないかも…山本君、郵便局までの道知ってる?」
「ああ、知ってるぜ?ここからビューンと行って、左の角をバビューンと曲がって、それからカキーンと……」
「ゴメン、もういいよ…」
思わず顔がひきつる
…山本君、それって道案内なの?
カキーンって出てたよ、今。
「そっか?」
「うん…また今度行くよ」
ティモッテオさんごめんなさい…と心の中で謝る瑠璃華に、山本は爽やかに言った
「なぁ、天草ん家ってどこだ?帰り、送ってくぜ!」
「え?だ、大丈夫だよ!山本君の迷惑になっちゃうし…」
「ハハッ迷惑なんかじゃねーよ!それに帰りに変な奴がいたら大変じゃねーか!」
「…たしかにそうかもしれないけど、多分そんなことないよ?」
「でも万が一ってあるだろ?やっぱ送ってくわ!」
瑠璃華が遠慮しがちに言うが、山本は相変わらず爽やかな笑顔で言う
やがて瑠璃華もその笑顔に押され、瑠璃華は家まで山本に送ってもらうことにした
道をただ歩くだけでは暇なので、2人並んで、仲良く話をしながら歩く
山本は野球部で、1年生でありながらもうレギュラーだということを知っている瑠璃華は野球についてたくさん質問し、山本はそんな瑠璃華に野球のことを教える
山本とは話がよく弾んだ
やがて、野球の話から別の話に変わっていく
「へー、天草って1人暮らしなのか?」
「うん。1人寂しく住んでるよ」
「ハハッ、そりゃ寂しーな!親はいねーのか?」
「…!」
何気なく聞かれたその言葉に、瑠璃華は思わず足を止めた