Snow White

□全ての始まりは転入から
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『…やめて』





降りしきる、雨

佇むは、1人の幼い少女







『…やめてよ……』



雨粒が、少女の身体に当たる
漆黒の髪が艶やかに濡れた


それでも、幼い少女は…







『…やめてー―――っ!!!』










ジリリリリリリリリッ


「うわぁっ!?」



耳元で鳴り響く音に、思わず瑠璃華は飛び起きた

目覚まし時計の音に驚き、ハアハアと息切れる。額には、いくつもの汗がうかんでいた




「……また」



嫌そうに頭を抱える
彼女…瑠璃華は、寝ると毎晩、夢にうなされていた

しかも、目覚める時には、その夢の内容を覚えてないのだ





「一体なんなの……私は、なんの夢を見てるの…?」



瑠璃華はくしゃりと、艶やかに光る漆黒の髪を掴む




…なんでうなされるの?

なんで……






しばらく頭を抱えたあと、まだ鳴り響いていた目覚まし時計をピッと止めた

そして瑠璃華は立ち上がり、閉めていたカーテンを開ける
薄暗かった小さな部屋に、爽やかな朝の日差しがさした





「…今日から、この日本で…この並盛町での生活が始まるんだ」


窓を開ける
冷たい朝の風が、頬に当たった





「こんなことで…めげる訳にはいかないよね」


誰にも向けることなく…瑠璃華はニコッと笑った




「さ、準備準備っ」


そして背伸びをしながら、部屋の奥に消えていく。







「…天草、瑠璃華、か…」



その様子を陰から見ていた、ある1人の赤ん坊はぽつりと呟いた
 

 


 

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