駄文
□過去は振り返るとめんどくさい
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その日吉原は大荒れだった。
数人の攘夷志士が入り込み強盗、辻斬りが横行していた。
百華の頭領である月詠は朝からその始末に追われていた。
確かに仕事があるのはうれしい。
でも多すぎる。
月詠は心の中でつぶやいた。
「こんな時あいつがいたらのう。」
「頭、何か言いましたか?」
「えっ!…なにもいっておらんぞ。」
つい独り言をいってしまった。
あいつとはもちろん白髪天然パーマの坂田銀時である。
紅蜘蛛党の一件の後日輪の計らいによって恋人どうしとなっている。
「いくら荷を背負うとはいわれても仕事までは手伝ってはくれなかろう。まったくわっちとしたことが…。」
「なんでそう言いきれんだよ。」
「……!!……」
驚いて振り返ると声の主は立っていた。
「ぎっ、銀時っ!なぜ主がここにおる?」
「そりゃぁあれだよ。自分の彼女が危険な状況にあると聞きゃぁ飛んでくるさ。」
「……すまぬ。」
「なにあやまってんだよ。こんなこと当たり前だろ。というより何で早くいわねぇんだ?言っただろ苦しいときには俺に縋れって。」
「危険なことに主を巻き込みたくなかったのじゃ。主が死んだら、わっちは……」
「馬鹿ヤロー。」
「……!!」
銀時は月詠を抱きしめた。
「それはこっちのセリフだよ。おまえが無茶して命落としたら俺ァ生きていけねえょ。」
「銀…時…。」
「お熱いとこ邪魔してすまねぇ……。だが、死んでもらうよ。」
突然の謎の声に驚く月詠を声と逆の方に突き放した銀時はあわてて木刀に手をやった。
「ふっふっ。さすがの身のこなし。これが坂田銀時……、いや、白夜叉かっ…!」
言ったが早いか男は刀を振り下ろした
「てめぇー女といるとこを襲うなんてそれでも侍かっっ!!」
銀時の木刀がうなりをあげて男の顔面を強打した。
「もう二度とここに来るんじゃねぇ。今度逢ったらこれじゃすまねぇかんな。」
「くっっ!おっ、覚えてろっ。」
男は言うが早いかすぐに逃げ出した。
「大丈夫か?銀時?けがをしておるぞ。」
「こんぐらい平気だって。って、おい月詠っ!」
月詠は銀時の手のけがを治療し始めた。
その姿を銀時は愛おしく見つめていた。
月詠はふとけがをしていない左腕に目をやった。よく見ると古い刀傷があった。
「銀時、これは…」
「あっ、なっ何でもねえよ。」
そう言うと銀時は傷を隠した。
「さっ仕事戻るぞ。いつまでもイチャついてたら終わんねぇだろ。この続きは仕事の後だ。行くぞ。」
そう言うと銀時はさっと行ってしまった。
(銀時に昔何かあったのだろうか。そう言えばさっきの男も白夜叉とか言っておった。あの傷と何か関係があるんじゃろうか?)