*銀魂*
□晴れ時々
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「お前それ、飲みすぎなんじゃないの?」
意識の隅の隅で、ダルそうにしゃべるその声は
心配しているようには到底聞こえない、いつも通りの調子であった。
嗚呼、矢張りこの銀色の髪の男は自分になど興味の欠片もないのだと知り
安堵とも絶望ともつかない感情が押し寄せてくると
目の前に存在していたグラスを手に取り、唇をあてがう。
「聞いてんのか?沖田君」
大体未成年の癖に、あそこの教育はどうかしている、なんて。
なんだかつまらない大人のようなことを言って、手にしたグラスを引き剥がそうとする男は
いつだってそうやって自分を子供のように扱い、真に向き合ってなどくれなかった。
しかし、其れとわかっていて。むしろ其れを望んで懐にもぐりこんだのは己だ。
本気で向き合ってなどくれなくていい。
「旦那はどうして、俺に付き合ってくれるんでしょうねィ?」
きっと、そういう自分の思いを銀時の方も知っていて、でも尚受け入れてくれる。
そうさせているのは自分の癖に。時々無性に、其れが気に食わない事があるのだ。
「お前は何で、いつも銀さんを困らせるんだろうねぇ?」
「またガキ扱いですかぃ?あんたァ、昔から・・・」
昔から。
そういったのは自分だったし、それを目の前の男にむけて言ったのではない事を
何処かしらで自覚していたが、正すことすらできずに次の言葉を飲み込んだ。
正してしまったら全てが終わってしまう気がした。否、始まっても居ないものに
終わりなどないとも思ったが、それでも今は居心地が良いこの腕を
自ら手放すのは口惜しかった。
「お前、ホント飲みすぎ」
しっかりしろよと続けて言い、額をあわせてくる。
その動作は、何もかもを許してやると言われているように
大らかで優しく、そういうものに触れるたびに何時も泣きそうになって
それを堪えるのは、素面の時でも難しいものがあったが故に
このときばかりは無意識に涙が頬を伝っていた。