*銀魂*

□エゴイスト
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ただ 忘れる事がひどく怖いのだ、と。

夜露に濡れた真っ赤な彼岸花をくしゃりと握り締めて沖田が言うと
圧力に耐えられず頭を失った茎が土の上にパサリと力なく落ちた。
それからハラハラと後を追うように、少年の手の中で散り散りになった
細い糸のような花びらが、次から次へと覆いかぶさり
まるで何事もなかったようにひとつになって風に吹き飛ばされ
そう遠くない暗闇の中へと消えていったのを見届けると
さて、何と言ってやれば少年の怒りのような悲しみをやり込める事が出来るか
まだ花の形を保っている残りの彼岸花を墓石に手向けながら考えた。

亡骸は残されたものの勝手な判断で灰にされ土に埋められ
それまでミツバをかたどっていた器がなくなってしまうと
じゃあ、器の中にあったはずの意思や笑い声や感情は何処へ行ってしまうのか、と。
この所の沖田は其ればかりを口にし酷く悲しそうに笑うのだけれど
銀時がその答えを持ち合わせている筈もなく、「わからねぇよ」と一言呟き
その場をなんとなく収めていた。

銀時とて、失う恐怖を知らないわけではない。

だけれども、その恐怖や悲しみは他人に諭されたところで
消えたり安らいだりはしない事も同時に知っているから
下手な自論を説く気には更々なれなかったのだ。
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